徒然想問

個の価値


△希少価値
「或る人問う」
 希少価値とは、ごく少ししか存在しないことから生ずる値打ち、即ち、例えば商
品の場合では、市場での価格が他より高い金銀宝石のことをと云う。
 
「我は想う」
 大乗仏教では、そのように尊くて貴重なものの例として、「金剛」の文言がよく
用いられる。
 
「或る人問う」
 と云うと?
 
「我は想う」
 金剛とは大乗仏教では、極めて堅固で壊れないもののたとえに用いられ、例えば
金剛杵(こんごうしょ)とは、密教で、煩悩を打ち砕く仏の智慧を象徴する法具、
金剛界とは、大日如来の智徳は何よりも堅く、全ての煩悩を打ち砕くことからその
名があると云う。
 
「或る人問う」
 希少価値を追求すればするほど、他の個(個々)の価値は低くなるのでは?
 
「我は想う」
 そう云う考え方もあろう。
 
「或る人問う」
 そうなると、大乗仏教が広まれば広まるほど、一個人の存在価値が希薄になる、
と云うことも考えられるね。
 
「我は想う」
 …………
 
「或る人問う」
 それでも…………
 
「我は想う」
 個の数がいくら多くなっても、各個人の生命の軽重は、推し量れないと想う。
 各個人の生命は、それぞれかけがえのないものである。かけがえのない生命と
は、その生命は、自分自身であるからである。

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