151 神皇正統記 天(その四)
第二代、正哉吾勝々マサヤアカツカチの速日ハヤヒ天アマノ忍穂耳ヲシホミミノ尊。高皇産霊の尊の女ムスメ栲
幡千々姫タクハタチヂヒメの命にあひて、饒速日ニギハヤヒノ尊・瓊々杵ニニギノ尊をうましめ給て、吾
勝尊葦原アシハラノ中州ナカツクニにくだりますべかりしを、御子うみ給しかば、「かれを下すべ
し。」と申給て、天上にとゞまります。まづ、饒速日の尊をくだし給し時、外祖グワイソ高
皇産霊尊、十種トクサの瑞宝ミヅタカラを授給。瀛都オキツノ鏡一ヒトツ、辺津ヘツ鏡一、八握ヤツカノ剣一、
生魂イクタマ一、死反シニカヘリノ玉一、足玉タルタマ一、道反ミチガヘシノ玉一、蛇比礼ヘミノヒレ一、鉢ハチノ比
礼一、品クサグサの物モノノ比礼一、これなり。此みことはやく神さり給にけり。凡オヨソ国の主
としてはくだし給はざりしにや。吾勝尊くだり給べかりは時、天照太神三種サンジュの神器
ジンギを伝ツタヘ給。後に又瓊々杵尊にも授サヅケましまししに、饒速日尊は是をえ給はず。
しかれば日嗣の神にはましまさぬなるべし(此事旧事本紀の説なり。日本紀にはみえず
)。天照太神・吾勝尊は天上に止トドマり給へど、地神チジンの第一、二にかぞへたてまつ
る。其始天下の主たるべしとてうまれ給しゆへにや。
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