04b 中国名著解題1
 
五山談叢
 宋の陳師道が著した四巻の書を云う。これは,師道が文芸について述べた談話集であ
 る。
 
呉志
 魏志,蜀志とともに「三国志」の一つである。これは晋の陳寿の撰した六十巻の有名
 な「三国志」のうちの呉の国の記である。
 
呉子ゴシ
 周の呉起ゴキの撰と云うが,いちがいに信ずることはできない。兵法の書で一巻。しか
 し,兵法の古書としての品格を持ったものである。図国,料敵,治平,論将,応変,
 励士の六編に分かれており,秩序整然たる記述で,「孫子」の奇変極まりないものと
 比べものにならないが,兵書としては優れたものである。
 
五雑爼ゴザッソ
 明の謝在杭が著した十六巻の書である。これは天・地・人・物・事の五部門に分かれ
 ており,いろいろと雑記したものである。
 
五代史ゴダイシ
 新旧の二種がある。旧書の方は宋の太宗が辟(草冠+辟)居ヘキキョ正等に命じて梁・唐
 ・晋・漢・周の時代を編した勅撰の史書を云い,百五十巻から成っている。その後宋
 の欧陽修が新たに春秋の書法を以て編集したのが新五代史で,七十五巻から成ってお
 り,これは私撰である。
 この両書は共に長短があるが貴重なものである。
 
五燈会元ゴトウエゲン
 宋の釈晋済の撰とされているが,宋代の書物には慧門ケイモンの撰としてある。これは「
 五燈録」の中から要点を抜粋したもので,禅宗の五家・七宗の人物について書いたも
 のである。五燈とは,呉の道原の「景徳伝燈録」と,後に出た「天聖広燈録」「建中
 靖国続燈録」「嘉泰普燈録」を云う。二十巻。
 
古文真宝コブンシンポウ
 編者は不詳。前集十巻,後集十巻から成っている。前集は五言古風,七言古風,長短
 句,歌などに類別してあり,魏・晋・唐・宗の各作家の優れた詩を選んでいる。後集
 は辞・賦・説・解等の十七類に分かれており,漢以後,宋までの古文を集録したもの
 である。
 わが国には五山時代に伝わり,初学必読の書として普及された。
 
古謡諺
 清の杜文瀾が編纂したもので,八十五巻,付録十四巻,集説一巻から成っている。こ
 れは明の時代までの謡諺を集大成したものである。
 
菜根譚サイコンダン
 明の洪白誠コウジセイが著した書で前集,後集の二集から成っている。前集の二百二十五
 条は任官中の保身の道を説き,後集の百三十五条は退隠後の山林閑居の楽を述べてい
 る。その内容は道家,禅家の説を交えた語録風の簡潔な文章である。
 
西遊記サイユウキ
 明の呉承恩の作とされている。字は汝忠,射陽山人と号す。鬼神小説の四大奇書の一
 つである。その内容は,唐の僧玄弉ゲンジョウが,孫悟空ソンゴクウ・猪八戒チョハッカイ・沙悟浄
 シャゴジョウの奇怪な従者を引き連れて天竺テンジクに行き,仏経を得て帰るという内容で,
 途中の千難万苦の情況を描き,暗に仏教の道を解釈した一種の教訓小説とも考えられ
 る。その童話的な架空の物語はわが国にも訳されて広く愛読されている。
 
左伝サデン
 「春秋左氏伝」の略。また「左氏春秋」とも云う。魯の史官左丘明サキュウメイの編纂した
 書で,三十巻から成っている。左丘明は孔子と同時代の人で,よく「春秋」を受け伝
 えたと云う。編年体で春秋の事実を集録し,義理の論は少ないが,「春秋」の時の事
 実をよく知ろうとするには,この書に拠らなければならない。この書を「公羊クヨウ」,
 「穀梁コクリョウ」の二伝と合わせて春秋の三伝と云っている。
 
山海経
  著者不詳。海や山の動物について記した十八巻の書である。
 
三国志サンゴクシ
 晋の陳寿チンジュが著した書で,六十五巻から成っている。これは呉・蜀ショク・魏ギ三国
 の歴史を書いたものである。当時重んじられた史書である。しかし,魏を以て正統と
 したことや,漢を改めて蜀としたことなどについては,学者から非難されている。元
 の羅貫中の「三国志演義」はこれに基づいて書かれた通俗小説である。
 
三国志演義エンギ
 明の初期の羅貫中ラカンチュウの作で,百二十回から成っている。中国四大奇書の一つであ
 る。陳寿の「三国志」に基づいて,漢の霊帝の中平元年から晋の武帝の太康元年まで,
 凡そ百年間の興亡変遷を小説化したもので,魏・呉・蜀の三国鼎立時代を背景にし,
 諸葛孔明など時の英雄豪傑を勇壮華麗に描いたものである。
 
三体詩
 宋の周弼シュウヒツの撰した書で,六巻から成っている。「三体唐詩」の略。これは唐の詩
 人百六十七人の作を集録してあり,七言絶句,七言律詩,五言律詩の三体に分けたの
 が書名となっている。「古文真宝」とともに広くわが国でも読まれている。
 
参同契
 唐の希遷の撰した禅書で,一巻である。これは五言,四十四句,二百二十字のうちに
 禅宗の要訣が挙げられている。
 
三略サンリャク
 中国の兵法七書の一つである。漢の張良が黄石公から授かったと云われるものである。
 これは上略,中略,下略と成っていて,古文特有の典雅な味がなく,後人の偽作とさ
 れている。
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