04a 中国名著解題1
 
紀効新書キコウシンショ
 明の威継光が撰した十八巻の兵書を云う。十八編が図によって解説されている。
 
魏志ギシ
 西晋の陳寿が編纂したもので,魏志紀四巻,列伝二十六巻,蜀志伝十五巻,呉志伝二
 十巻の合計六十五巻から成っている。これは魏,蜀,呉の三国の歴史を書いたもので,
 「三国志」とも云われるもので,二十四史の一つである。文章は簡潔質実で,重要な
 史書とされている。
 
魏書ギショ
 北斉の魏収が勅令によって撰した百二十四巻の史伝を云う。
 
旧唐書キュウトウジョ・クトウジョ
 五代の後晋のときの官撰で,宰相劉句(日+句)リュウクなどの手に依って成った二百巻
 の書を云う。これは唐代の歴史書である。
 欧陽修の「新唐書」が出てからは,本書は一時絶版されていたが,二書とも長短があ
 り,清朝に至って二書とも刊行されるようになった。
 
曲礼キョクレイ
 これは「礼記ライキ」の初編であって,上下二編から成ってある。これは礼儀作法につい
 て詳しく記してある。
 
近思録キンシロク
 宋の朱子と呂祖謙ロソケンの共撰した,十四巻の書を云う。宋の道学者周廉渓,程明道,
 程伊川,張横渠の四人の書より修身,治国の日常礼儀に必要なもの六百二十二条を撰
 び,これを十四部門に分けて編纂したものである。
 
孔叢子クソウシ・コウゾウシ
 朱子学の教科書とも云うべきものである。漢の孔鮒が撰したものに,後人が付加した
 もので,七巻二十三編から成っている。これは,孔子以下,子思,子上,子高,子順
 の言行を集めたもので,「孔子家語」とともに孔子伝説の変遷を窺うことができる貴
 重なものである。なおこれは,孔鮒以後の一族が相次いで書き綴って完成したものと
 考えられる。
 
華厳経ケゴンキョウ
 仏典で正式には「大方広仏華厳経」と云う。これには六十巻,八十巻,四十巻の三つ
 の訳書がある。
 
元曲ゲンキョク
 元の時代,王実甫ジツホの著した戯曲を云う。明時代の戯曲を「南曲」と云うのに対し
 て,これを「北曲」とも云う。序幕を加えて五幕物で,その代表的にものに「西廂記
 」「漢宮秋」などがある。これはわが国でも知られている。
 
康煕コウキ字典
 清の聖祖康煕が五十五年(1716),大学士張玉書,陳廷敬等二十九人の儒者に撰修さ
 せた字書で四十二巻(収載字数四万五百余字),補遺一巻から成っている。これは字
 ごとに音と意味が記してあり,次に別音,別義が加えられており,また典拠となって
 いる古文も載せてある。それに別体,俗書,略書も付されてあり,後世の字典の原点
 として重要な文献である。
 
孝経コウキョウ
 孔子及び曽子の孝行の道について言ったことを曽子の門人が撰したものと云われる一
 巻の書である。人の道の大事は親子の至情に基づくものであることを力説している。
 秦の時代に儒書を焼いたとき,顔芝ガンシという人がこっそりこれを秘蔵し,漢の時代
 になってから世に出したのを「今文孝経」と云い,「尚書」や「論語」などと共に孔
 子の家の壁から出たものを「古文孝経」と云う。また今文,古文に異同があるが,唐
 の玄宗は,今文に註をを付して天下に分かち,またこれを石に刻んだ。これを「石台
 孝経」と云う。今なお長安に残存している。
 
恒言録コウゲンロク
 清の銭大斤(日+斤)の撰した六巻を云う。これは方言とか俚諺について,その由来
 や転訛などを考究した好読物である。
 
孔子家語コウシケゴ
 孔子の言行及び門人との問答,論議を集録したもので十巻から成っている。しかしこ
 れはその後紛失し,現行本は魏の王粛が古書から孔子関係の記事を集めて偽作したも
 のであるが,孔子の遺言や逸事を集めたのはこの書だけなので,その意味から珍重さ
 れている。
 
後周書
 唐の令狐レイコ等が撰した五十巻の史書を云う。別に「周書」,「北周書」とも云う。こ
 れは南北朝の北周時代五代二十五年間の事跡を記載してある。
 
呉越春秋ゴエツシュンジュウ
 後漢の趙曄チョウヨウが著したもので,十巻から成っている。春秋とは歴史のことで,これ
 は呉越二国の興亡を論述したものである。呉の太伯より夫差まで,越は無余に始まり
 勾践コウセンまで載せてある。小説的な修飾があり,なかなかの力作である。
 
後漢書ゴカンジョ
 六朝末の宋の范曄ハンヨウの編纂したもので,百二十巻から成っている。十紀,十志,八
 十列伝を作ったが,そのうちの十志が未だ完成しないうちに刑死した。後,梁リョウの時
 代の司馬彪が補成し,唐時代の章懐ショウカイ太子が当時の学者数人に注を作らせたもの
 が,現在伝わる「後漢書」である。これは後漢二十帝の紀伝体の歴史書である。
 
国語コクゴ
 周の左丘明サキュウメイの著したもので,他に「左氏伝」がある。「左氏伝」が魯ロの国だけ
 を記したのに対し,これは春秋時代の八国のことを書いた編年体の歴史書で,つまり
 他国の事実を詳記して左氏伝と照応し,事実を明らかにしようとしたものである。「
 左氏伝」は魯国の歴史なので内伝と云い,「国語」は周・魯・斉・晋・鄭・楚・呉・
 越など八国の歴史なので外伝とも云う。
 
穀梁伝コクリョウデン
 周の穀梁赤(字は元始)の撰したもので十一巻から成っている。これは孔子の著した
 「春秋」の解説書として有名な春秋三伝の一つである。三伝とは本書と,左丘名の「
 左氏伝」(左伝),公羊高の「公羊伝」を云う。
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