0401a 中国名著解題2
洞山語録
高安の洞山に住んでいた曹洞宗の良价禅師の語録である。
唐詩選トウシセン
明末の坊賈が,李攀竜リハンリュウの編した「古今詩刪」の中から唐詩だけを抜き出して単
行本とし,これに「唐詩選」の名を付したものである。しかし編者は矢張り李攀竜と
なっており,七巻から成っている。唐代の詩人百二十七人の詩を集録したものである。
その内容は,五言古詩,七言古詩,五言律,五言排律,七言律,五言絶句,七言絶句
の四百六十五首を詩体別に分類したものである。
わが国へは江戸時代の初期に伝来し,服部元喬(南郭)が教科書に用いてから,大い
に普及した。
唐書トウジョ
「旧唐書」を改修して二百二十五巻とした史書で,「新唐書」とも云われ,両書を合
わせて唐史は完備された。「新唐書」は,宋の欧陽修オウヨウシュウ,宗祁ソウギの共著であ
る。
唐宋八家文読本トウソウハッカブンドクホン
清の沈徳潜の編纂した書で,三十六巻から成っている。これは,宋の欧陽修,蘇洵,
蘇軾,蘇轍,曽鞏,王安石の八大家の文を収録したものである。これは毎編評点段落
を施し,前人並びに編者自らの評語を加えるなどして,初学者向きの読本としている。
南史ナンシ
正史の一つで,唐の李延寿の編纂した諸で,八十巻(本紀十巻,列伝七十巻)から成
っている。これは宋・斉・梁・陳の南朝四代,百七十年の歴史書である。南北朝史を
統一しようとした父の遺志を継ぎ,貞観年間,各国の正史に基づいて南史,北史の二
書を完成した。北史は魏から隋までの事跡で,この二書があれば,南北八朝の正史を
読む必要はないとまで称された名著である。
南斉書ナンセイショ
正史の一つである。「斉書」とも云う。梁の蕭子顕の撰した書で,五十九巻(本紀八
巻,志十一巻,列伝四十巻)から成っている。子顕は斉の高帝の孫である。南斉の歴
史書であるが,斉の檀超,王儉,江淹等の撰した史書を集大成したものである。
仁王ニオウ経
唐時代,不空が訳出した二巻の仏経である。仏陀が仁王(当時の十六大国の国王)に
国家安泰の基として信仰の道を説いた教典である。
二程語録
清の張伯行の撰した書で,十八巻から成っている。宋の大儒程明道・程伊川兄弟の語
句を,門人が収録したものを,朱憙が再撰した「二程遺書」と,同じく二程子の門人
の記録を朱憙が編纂したものを合巻したものである。
二程全書
宋の程景(景+頁,明道),程臣(臣+頁,伊川)兄弟の遺著で六十七巻から成って
いる。明の徐泌達が合刻したものである。
涅槃ネハン経
「大般涅槃経」の略。仏陀入滅について書いた教典を云う。東晋の法顕訳出の三巻,
或いは北涼元始年間に曇無讖訳出の四十巻(北本涅槃経),また劉宋代,慧厳等が北
本涅槃経から再訳した三十六巻の通称「南本涅槃経」など幾種類かの訳書がある。こ
れは「全て生あるものは仏性である」と云う根本思想に基づいている。
佩文韻府ハイブンインプ
清の聖祖皇帝の康煕四十三年(1704)に,張玉書,陳廷敬,李光地等七十六人が勅命
を奉じて編纂に着手し,五十年(1711)十月に完成したもので四百四十四巻から成っ
ている。これは詩作のための,韻字引きの字典であり,古今の韻書の集大成である。
白氏文集ハクシモンジュウ
唐の詩人白楽天ハクラクテンの詩文集で,七十一巻から成っている。「白氏長慶集」「文集
モンジュウ」とも云う。長慶は穆宗の朝の年号である。最も広く愛読された漢書の一つで,
平安時代以後の国文学に非常な影響を与えた。書中の「長恨歌」や「琵琶行ビワコウ」な
どは,特に有名である。
卑(土+卑)雅ヒガ
宋の陸佃が撰した書で,二十巻から成っている。これは鳥獣虫魚草木など部門別にそ
の字義を解説したものである。「卑(土+卑)雅」という書名は中国最古の字書であ
る。「爾雅」(二巻)を補うものと云う意味から付けたものである。
琵琶行ビワコウ
唐の白楽天の詩で,元和十年(815)の作である。江州司馬に左遷された翌年の秋の一
夜,客を送って溢浦口に行ったが,船中で琵琶を弾く歌妓に会った。その身の上話に
よると,昔,長安の都で盛名を馳せた名妓の成れの果てで,この地に流浪してきたと
云う。白楽天はこの身の上話を聞き,人の世の栄枯盛衰の無常観を深く感じ,その不
遇に想いを寄せて,深く同情して,この六百十六字の大作を書いて贈ったと云う。
風俗通義フウゾクツウギ
後漢の応劭オウショウが撰した書で,十巻(付録一巻)から成っている。「風俗通」と略称
している。世俗の典礼で言語,風俗などについて,その誤りを正し,義理に適うよう
にとの趣旨から上梓されたものである。
福恵全書
清の黄六鴻の撰した書で,三十巻から成っている。福を地方に与え,恵みを民衆に施
すべき地方行政の要訣を説いたものである。
仏国記ブッコクキ
宋の釈法顕の撰した,一巻の書である。晋の義煕の世,法顕は長安より天竺(インド
)に遊び,三十余国を遍歴し,帰国してその見聞を記したものである。書中に誌され
た山川道里は貴重な資料となっている。
文子
「通玄真経」とも云う。周の文子が撰したと云われる二巻の書である。老子の弟子で
ある文子が師の説を分かり易く補足したものである。ただし文子の編撰したものでは
ないと云う説もある。
文章軌範ブンショウキハン
南宋の謝枋得の編纂した書で,七巻から成っている。官吏採用試験の受験者のための
軌範とすべき文章で,陶淵明の帰去来辞,諸葛亮ショカツリョウの「出師表」を始め,韓愈,
柳宋元,欧陽修,蘇軾など,漢・晋・唐・宋の文人の作六十九編を収録している。各
編毎に評語や,注釈を付してあり,教科書の使命を果たしている。
わが国では頼山陽がこれを基にして,「謝選拾遺六巻」を選集して刊行した。
文心雕竜ブンシンチョウリュウ
梁の劉キョウの選した詩文を論評した書で,上下二編に分けて編纂したもので,十巻
から成っている。上編二十五編は文章の体裁を論じ,下編二十四編は文章技法の巧拙
を論じている。別に序志が一編あり,この書の趣旨を明らかにしている。文章研究の
書としてはこれが最も古く,かつ精密を極めている。
碧ヘキ巌録
圜エン悟克勤の著した仏書で,十巻から成っている。「碧厳集」とも云う。
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