0401 中国名著解題2
中国名著解題
参考:金園社発行「ことわざ事典」
大学ダイガク
「論語」「孟子」「中庸」とともに四書の一つである。元は「礼記」中の一編であっ
たものを,宋の司馬光がこれを取り出して別書とした。朱憙シュキがこれを尊び,前記四
書の一つに加えたものである。この書の作者や名義については諸説があるが,朱憙は
孔子の弟子曽子の作とし,小学に対して大人の学と解釈している。これは,当時の貴
族に対する大学教育の目標を教えたものである。内容は明徳,止至善,親民の三綱領,
更に格物,致知,誠意,正心,修身,斉家,治国,平天下の八条目から成っている。
これは儒教の原理と方法とを条理整然と説いたものである。
大学衍義エンギ
宋の真徳秀の撰した書で,四十三巻から成っている。これは「礼記」の中の一編「大
学」を注釈したもので,王者の修身のことを説いている。
大智度論ダイチドロン
竜樹の著で,大品般若経を解釈した書で,百巻から成っている。
大唐西域記ダイトウサイイキキ
唐の僧玄奘が訳し,同門下の弁機の撰した書で十二巻から成っている。立奘が貞観三
年(629)長安を発してインドに渡り,同十九年(645)三月帰国したが,前後十六年
間の巡歴した中亜及びインドの百十国の大見聞記である。「西遊記」は同じ材料の小
説化したものである。これは,地勢,風俗,伝説,産業,政治等詳細に述べられてい
る。そのため,古代インドの貴重な資料とされ,また,西洋諸国でも東洋研究には珍
重されている。
大論
「塩鉄論」の中の一編である。
大戴記ダタイキ
「大戴礼」とも云う。前漢の戴徳が撰した書で,八十五編から成っている。これは周
末から秦・漢へかけての儀式・礼節のことを集めたものである。
丹鉛総録
明の楊慎が撰した事典的書物で,二十七巻から成っている。これは天文・地理・時候
・植物から詩まで二十六項に分類されている知識の泉である。
中庸チュウヨウ
四書(大学・論語・孟子・中庸の四書)の一つである。孔子の孫の子思シシの著。子思
は曹子に学び至極に達した。「中庸」は大学と同じく,元「礼記」の中にあったもの
を,六朝リクチョウの世に取り出して別書としたものである。現在伝わる中庸章句一巻は朱
憙が注釈したものである。これは,当時老子の学が盛んであったのを,子思はこれを
憂い,孔子の学の中庸にして偏せず,その大を極め小を尽くして,決して浅薄なもの
ではないことを説いたものである。
長恨歌チョウゴンカ
唐の白楽天の作で,七言の長編古詩。玄宗皇帝が美女楊貴妃を愛し,そのため政治を
怠り,天下が乱れて安禄山アンロクザンの乱が起こった。一時その勢力が強く,玄宗は遂に
蜀に亡命し,途中馬嵬バカイでやむなく楊貴妃を殺した。玄宗はその後も楊貴妃の事を
思い諦められず,悼み悲しんで長く恨み続けた,と云うことを述べたものである。元
和元年(812)の作である。これは白文中の傑作で,わが国の「源氏物語」桐壷の巻前
半がこれによって構想されているなど,国文学にも多くの影響を与えた。
朝野僉載レンサイ
唐の張文成の撰した書で,六巻から成っている。
陳書チンジョ
「梁書」と同じく唐の姚思廉の撰した書で,三十巻(五本紀六巻,三十列伝三十巻,
志表はない)から成っている。南朝の陳一代の事績を記したもので,体裁は「梁書」
のように粗雑ではないが,避諱ヒイの多い点が資料としての価値を減じている。
枕中記チンチュウキ
唐代の小説化李泌リヒツの著である。「文苑英華」や「太平広記」の中に収められてい
る。盧がカンタンで仙人の枕を借りて眠り,夢に五十年の栄華を見た後,目醒めてみれば
黄梁の煮える間のことであった,と云う有名な"カンタンの夢枕"の物語である。
通俗編
清の人が撰した書で,三十八巻から成っている。日常に見聞する語句,事物について,
これを分類してその出典・由来などを示した博引傍証,類書の一つである。興趣に富
んでいる。
通鑑綱目ツガンコウモク
「資治通鑑綱目」のこと。宋の朱憙とその門人趙師淵の修編したもので,五十九巻か
ら成っている。周の威烈王二十三年から,後周の世宗の顕徳六年(959)に至る千三百
六十二年間の事を集録した編年体の史書で,綱と目とに分けて編纂してある。
帝範テイハン
唐の太宗が自ら撰して,太子に与えられたもので,四巻・十二編から成っている。帝
王たるものの模範とすべきことを記している。太子は後の高宗である。
伝家宝
清の石成金の撰した書で,十六部から成っている。これは,処世訓を主とし,詞あり,
笑話あり,小説もある,と云う広範囲に亘る通俗教育的なものである。
伝習録デンシュウロク
明の王陽明の語録で,門人の徐愛等が編纂した書で,三巻から成っている。陽明の学
説の大綱は殆ど本書に備わり,近思録の朱子派にあるように,また陽明学派の教科書
とも云うべき書である。
伝燈録(景徳伝燈録)
宋の沙門道原の撰した書で,三十巻から成っている。これは釈迦以来の仏教の各祖師
の教派の流れを系統付け,法語を集めたものである。後にこれに倣って,いろいろの
燈録が著された。
その一つに,明の僧智達の撰した戯曲の編名で,原題は「異方浄土伝燈帰元鏡三祖実
録」と云うものである。これを略して「伝燈録」と云っている。
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