02 湯立神事とは
参考:堀書店発行「神道辞典」
〈湯立神事〉
湯立神事ユタテノシンジとは、巫女ミコなどが釜の周囲を廻り、笹に熱湯を浸し、身に滌ソソぎ
掛けて神に祈る行事である。今では湯による一種の浄祓の意が強くなっているが、古く
はそうすることにより、神懸かりし託宣する神事であった。
湯立神楽の代表的なものは、三信遠地方の霜月神楽(冬祭・花祭)である。釜の上に白
蓋(梵天・湯の上)と呼ぶ天蓋を吊るし、禰宜が湯たぶさ(湯ぼく)で湯を撒き散らし、
神を招き降ろす。湯中に入れられた一年神主が述べる言葉から神意を聞くと云う、島根
県美保ケ関神社の湯立神事(三月十五日)は神意を問うことを主目的として湯立である。
また主として清め祓いを目的とした湯立の例には、西日本の頭屋祭で頭人の行う湯立、
神奈川県足柄下郡で行われる湯立獅子舞などがある。
因みに「クガダチ(盟神探湯・探湯・誓湯ウケヒユ)」とは、古代神判の一である。神に誓
わせた後に熱湯の中に手を入れ、その手が爛タダれるか否かによって、事の是非を判ずる
方法である。例えば、応神天皇の御宇九年に甘美内宿禰ウマシウチノスクネが兄の武内宿禰タケシウチノ
スクネを讒言したとき、勅して兄弟に磯城川の浜で探湯をさせたところ、武内宿禰が勝った
と云う。後世の湯立や湯起請もこの方法から出たのであろう。
また「占(卜)ウラナイ」とは、神意に問うて事の吉凶正邪を判定する法で、盟神探湯も
その一種である。
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