〈郷内行事 − 小正月の遊び〉
小正月には、橇遊びや宝引き(以上前述)のほか、カマクラやカナスベリ(スケート
)をします。男の子はジングリ(独楽廻し)、コゲェ打ち、凧上げ、女の子はおはじき、
鞠マリつき、ジャック取り、歌留多カルタ取りなどをします。
大里では、カマクラで寝泊まりしたり、餅を焼いて食べたりします。餅は各家々を廻
って、大日堂舞楽のときの「駒舞」を舞って貰って来るのです。このとき「チリン、チ
リン、駒のマァエ(舞)、駒のマァエ、ダッダ、ダッダ」と叫びます。
女達は、よく宝引きホウビキ(後述)をします。
〈郷内行事 − 米糠粟糠ホガホガ〉
小正月の夕方、銭や宝物が家に沢山入って来るようにと、米糠と粟糠に一升枡に入れ
て「米糠モホガホガ、粟糠モホガホガ」「ダエド、ヤシキノタカラド、ジェニド、ハイ
ッテコイ」と言いながら家の周りに撒きます。又は、籾殻と大豆殻を混ぜて一升枡に入
れ、「マメヌカノホガホガ、イネヌカノホガホガ、ゼニトカネ、トンデコイ」と言う家
もあります。
〈郷内行事 − 歳縄トシナ引き〉
十五日の夜、花輪下タ町・川原町では人々が多数集まり、年の豊凶を占う歳縄引きが
行われます。若者達が各家々から稲藁を集め、道路端の栗の木に引っかけて大きな太綱
フトヅナを撚ヨり、福士川を挟んで綱引きをします。勝った方が、綱を近くの砂森の田代神
社(田の神様)に奉納し、秋の豊作を祈ります。綱は髑髏ドクロ巻きにしてその上で角力
をするなど、夜通し賑わいます。
また盆坂と沢口でもこの日、綱引きがあります。
大里では十五日の宵、「大清水オシズの綱ひっぱり」が行われます。子供達がポポーに
使った藁を集めます。若者達が始めに龍頭を、次に蛇体と尾を作ります。長さは平年で
十二尋、閏年は十三尋の太い綱を撚って、皆で担いで笛に合わせて蛇踊りをし、大清水
に奉納した後、子供や若者達が綱引きをします。
また谷内では十六日の晩に、村の上と下に分かれて、子供達の綱引きをします。
〈郷内行事 − 成る木ナルキ責め〉
成る木責めは、屋敷内の果樹に沢山実が成るように念願する行事で、十五日の晩に男
が鉈ナタか斧オノを持って、梅や梨の木の下に行き、鉈で木の幹を叩タタきながら「今年実な
るか、ならねか、ならねば伐るぞ」と言う。すると女が後ろから「今年実なるなら、何
とか伐らねでけれ」と答え、掛け合いで木を責める仕草をします。
十六日 〈伝統行事 − 若水汲み〉
この日も若水を汲みます。
大里部落ではこの朝、若者達は大清水の井戸で垢離コリを執って身を清めます。
〈伝統行事 − お寺参り〉
この日は地獄の釜の蓋フタが開ける日と云い、お寺参りをします。即ち檀家は菩提寺へ
参り、本堂や各自祖先の位牌を拝みます。お寺参りから帰るまでは、日常使う道具も休
ませ、普段の掃き掃除などの仕事も何もしません。
長牛部落では、「臼伏せ」と云って庭(土間)に臼を伏せて注連縄を張り巡らし、そ
の上にお供えを載せて拝礼します。
〈伝統行事 − 綱引き〉
この日の夕刻、子供達がポポーや田植えの藁を集め、若者も手伝ったりして藁を撚り
合わせ、太い綱を作ります。
夕食後、部落を上カミと下シモに分かれてヨイショヨイショと掛け声勇ましく綱引きをし
ます。上が勝てば○○、下が勝てば☆☆と豊凶を占いました。
十七日 〈伝統行事 − 観音とっこ〉
この日大里部落では、上村の鎮守神観音堂の「とっこ」を営みます。最近では上村と
川原の下村にと分かれて毎月営んでいます。
この日は長牛部落の大日霊貴神社(大日堂)の例祭につき、村を挙げて賑わいます。
関連リンク[長牛大日霊貴神社]
十九日 〈伝統行事 −鉈ナダの餅 〉
鉈は男仕事の必要不可欠の道具につき、一年中お世話になっている鉈の霊に感謝し、
供養する趣旨から、若者達が集まって餅を搗き、酒を飲んで一晩賑やかに楽しみます。
皆で会費を出し合い、年々廻り宿で当番を務めます。
〈伝統行事 − おぼけ餅〉
「おぼけ餅」とは、男の「鉈の餅」に対する女の集まりで、おぼけとは、機織ハタオリの
材料である撚ヨった麻糸アサイトを入れて置く竹篭のことです。女達の重要な仕事は機織りに
つき、このおぼけの霊に感謝し、供養します。即ちご馳走を食べたり、歌ったり踊った
りします。余興として「宝引きホウビキ」などをして、一晩を楽しみます。
〈伝統行事 − 宝引き〉
お正月やお彼岸の期間、婦人達は宝引きをして楽しみます。即ち数十pの麻縄(カッ
チョ縄)を人数分用意し、親元はその一本の元に宝(五円玉を数個〜十数個)を括り付
け、全部の麻縄の元を纏めて持ちます。他の人達は麻縄の先を一本ずつ選んで握り、一
斉に引っ張ります。親元はそれと同時にパッと麻縄の元を放すと、一人だけがチャリン
と音を発てて宝を引き当てることになります。そして、何がしかの「賞」を貰うことに
なります。
宝引きは主として婦人達の遊びですが、冬期間の楽しみとして、各家庭でも炬燵にあ
たって、みんなで遊びます。
二十日 〈伝統行事 − 二十日正月〉
この日は二十日正月とも云い、楽しみ続けた正月行事も終わりの折目をつけ、いよい
よ明日から気を一新して仕事にをと、意を決する日で、繭玉マユダマを取り外したり、雑炊
を食べたりします。
二十五日 「天神講の儀」 於宮司宅
「二十五日」はご祭神菅原道真公の「縁の日」につき、毎月二十五日は氏子有志が講
中となり、一千円と白米五合を持ち寄って、「天神講の儀」を執り行います。
即ち「菅原神社」及び「菅公のご肖像」の掛け軸を掲げるなどして神前を整えて、修
祓、一拝、宮司祝詞、一同拝礼、一拝、そして宮司手作りの「天神講テキスト」の解説
があり、引き続き直会となります。
天神講中は男性のみの集まりです。
「画像表示」
[次へ進む]
[バック]