45a 九字護身法とは
 
  毎朝日天子拝見之大事
毎朝早く起きて手を洗い口を嗽ソソぎ、東方ヒンガシ日出ヒイヅルカタに向って修すべし。 先づ
三礼サンライし、
○合掌テヲアワセ唱文モンヲトナヘル
 南無帰命頂礼ナムキミョウチョウライ。大日天子ダイニッテンジ。天照坐アマテラシマシマス日大御神ヒノオオミガミ。
 為度イド衆生故シュジョウク。普照四天下フショウシテンゲ。            右三返
 
○外縛印 手の指を外へ組みあわす事
 七難即滅
 
○内縛印 十の指たがひにうちへくみいるる事
 七福即生シチフクソクショウ
 
○金剛合掌 指さきをまじへて、手をあわす事
 
○九字
 ここにて九字を修すべし、九字の法別に出だす
 
○合掌
 護持ゴヂ某甲ムコウ哀愍アイミン納受ノウジュ畢而オワッて三礼サンライす
 
○護身法印明ゴシンボウインミョウ
浄三業ジョウサンギョウ三部サンブ、被甲ヒコウこれを護身法といふ、十八契印第一にして秘密人身
の印言インゲンなり。此の法を修せんと欲せば、身器シンキを清浄にし、檀上を荘飾して随分
に供具クグをそなへ、五体を地に投げうちて本尊を礼し奉タテマツり、誠心に修行すべし。如
法ニョホウに行ずれば身口意シンコウイにつくるところの罪障を消除し、三部諸尊の加護を蒙り、
身をして堅固ならしめ、諸の魔性を降伏ゴウブクし、水火盗弊一切の厄難の恐れなからし
む、真マコトに難遭遇未曽有の密法なれば、謹んで行ひ奉るべし。此の法は密家に秘諜ヒチョウ
するところなれども、二三輩の信士シンジの懇情するに委せつつ梓に寿するものなり
 
○浄三業印明ジョウサンゴウインミョウ
 身口意シンコウイに作る所の諸の罪業ザイゴウを滅して、清浄なることを行せしむる印明な
り。
 即ち、左右の手を相合わせて掌中をうつろにすへ、これを虚心合掌といふ。口伝
 
○仏部三昧耶ブツブサンマヤ
 十方三世諸仏の護念を行って、寿命を増し福恵を長ず。
 即ち、前の印にて掌テを開き、風指フウシのさきを二中指の上節につけ、二大指屈カガまし
て頭指の下節に安んず。
 
○蓮華部三昧耶レンゲブサンマヤ
 釈世尊菩薩等の諸の菩薩の加持を行って、一切の業障ゴウショウを消除するなり。
 即ち、左右五指を開き散らして、大指小指を相付けて、八葉ハチス蓮花レンゲの形のごとく
す。
 
○金剛部三昧耶コンゴウブサンマヤ
 金剛部の諸尊の加彼カヒを蒙り、一切の厄難を除き堅固の躰となる。
 即ち、左掌を返し伏せて外へ向け、右をあふぎて手の背ソビラを付け、大指小指互ひに
はしを引きうけて講の如くす。
 
○護身産昧耶ゴシンサンマヤ
 諸の天魔テンマの障碍ショウゲを除き、一切の厄難を除け、身をして堅固ならしむ。
 即ち、二手内に交へて、二中指はしを合わせて、二頭指を少し曲げ、二大指にて无名
指のもとをおす。口伝
 
右護身法印明ゴシンボウインミョウほぼこれを注す。対釈タイシャクは儀軌ギキのみのしるところにし
たがひ、梵音ボンオンは家の聖ヒジリにまかせつつ、これを記す。しかれども猶口授によらざ
れば越法エッポウの罪そのおそれあり、これを修シュせんと思はば伝密の先達に付きて、更に
問ふべし
                     干時文政改元五月五日
                     行智法印の口授を受けて門人仏心道人
     明治二十年一月十四日出版御届
     同  年同月二十九日納本
                傍訓兼出版人            伊丹安蔵
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