45 九字護身法とは
[九字護身法]
九字クジ伝授
抑も九字は身を護るの大秘法にして軽々しきのことにあらず。その法毎朝手洗ひ口瀬ソソ
ぎ、北に向ひて濁気ダクキを吐きすて、東方に向かひて口を開アき、息を内に引き、生気
セイキを吸い飲むこと三たび、次に歯を叩くこと三十六度、気キを下し、心を安静にして、
是を修シュすべし。或いは旅にて山中曠野、或ひは夜行ヨミチ又は闇室孤居などにも是を修す
れば、自身忽ち威力を増し、諸々の怨敵悪魔狐狸狐狸の属タグヒまでも、便タヨリをうかがひ
障碍ショウゲをなすこと能はず。神妙不測フシギの大秘法たれば、疑ひの心を生せず、至信
シシンに行ふべし。但しかく尊き法なれば、其の人平常ヘイゼイ仁慈忠孝の志なく、非法濫行
の族ヤカラにては、更に験シルシなく却って冥罰ミョウバツを蒙るべし。正直潔白にして天道テントウ
を恐れ人道ニンドウに背かず、己々オノレオノレが家業を大切にして、正真ショウシンに此の法を修す
る人は必ず其の利益著しく、剣難ケンナン賊難水火の難、一切の悪事災厄を免がれ、安穏に
身を護るべし。深秘シンピの法なれども、衆人の為に弘く師伝の旨を伝ふるもの也。猶切
紙に委しく粗略にすることなかれ。
文化十二乙亥春 法印行智白
右信心に依って取次
大摩利支尊天ダイマリシソンテン秘授ヒジュ兵法ヒョウホウ九字之大事ダイジは、身心堅固にし、運力ウン
リキを増し、怨敵を退け、悪魔を払ひ、悪霊邪鬼狐狸妖怪を滅ぼし、総じて一切の厄難を
除き、諸モロモロの願望を成就円満なさしむるの神術シンジュツなり。至心シシンに伝授して久しく
修する人は、霊験レイゲン実にいちじるき者也。
仏心道人 勧行
切紙九字之大事
[臨リン]独古印トクコノイン
左右の手をうちへくみて、頭指ズシをたててあわす。
[兵ヒョウ]大金剛輪印ダイコンゴウイン
二手うちにくみ頭指をたて付け中ゆびにてかくむ。
[闘トウ]外師子印ゲジシノイン
左右たがひに中指チュウシにて頭指をかくみ、大指ダイシ无名指ムミョウシ小指ショウシをたてあは
す。
[者シャ]内師子印ナイジシノイン
左右たがひに中指で无名指をからみ、大指頭指小指をたてあはす。
[皆カイ]外縛印ゲバクノイン
二手おのおの外へくみあわする事。
[陳ヂン]内縛印ナイバクノイン
十トウの指たがひにうちへくみいるるなり。
[裂レツ]智拳印チケンノイン
左四指をにぎりて頭指をたて、右にて図のごとく左の頭指をとる。
[在ザイ]日輪印ニチリンノイン
左右の大指頭指さきを付け、余の四指はひらき散す。
[前ゼン]隠形印オンギョウノイン
左の手をうつろににぎり、右の手の上におく。口伝
次に刀印をむすび、九字を唱へながら、図のごとく画キるべし
A C E G
兵 者 陣 在
@臨 + + + +
B闘 + + + +
D皆 + + + +
F裂 + + + +
H前 + + + +
刀印とは、右の手の頭指中指を立て、余の三指はにぎることである。
左の手は、刀印を結んで腰におく。即ち鞘なり。
指の名 大指ダイシ (親指)
頭指ヅシ (人差し指)
中指チュウシ (中指)
无名指ムミョウシ(薬指)
小指ショウシ (小指)
[日天子真言ニッテンジシンゴン]
[摩利支天真言マリシテンシンゴン]
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