27a 大神宮(伊勢神宮)を拝ヲロガみ詠める歌
 
△参宮(皇女参宮)
河上カハノヘにゆついはむらに草むさず 常にもかもなとこをとめにて(萬葉集 一雑歌)
 
△同(庶人参宮)
旅立やよい日の岡に見送りて まづ盃を捧げ上げましよ(東海道名所図会 一)
 
△斎宮イツキノミヤ(野宮)
いすゞ川たのむこゝろはにごらぬを などわたるせの猶よどむらん
                       (新葉和歌集 九神祇 祥子内親王)
 
△同(群行)
もみちばをぬさと手向てちらしつゝ 秋とゝもにやゆかんとすらん
                            (後撰和歌集 十九離別)
 
世にふればまたもこえけり鈴鹿山 むかしの今になるにやあるらん
                         (拾遺和歌集 八雑 斎宮女御)
 
おほよどのうらに立波かへらずは 松のかはらぬ色を見ましや
                     (新古今和歌集 十七雑 女御徽子女王)
 
都いでゝ八十瀬わたりし鈴鹿河 むかしになれどわすれやはする
                     (続古今和歌集 十羇旅 式乾門院御匣)
 
わかるとも立もはなれじ人しれず そふる思ひのけぶりばかりは
                            (同 九離別 月花門院)
 
なれきても別るゝみちのたびごろも 露よりほかに袖やぬれなむ(同 権中納言長雅)
 
△同(奉祀)
さかづきにさやけき影のみえぬれば ちりのおこりはあらじとをしれ
                           (後拾遺和歌集 二十神祇)
 
△同(解職帰京)
うゑおきて花のみやこへかへりなば 恋しかるべき女郎花かな
                     (新続古今和歌集 九離別 粛子内親王)
 
△同(自初斎院及野宮退下)
鈴鹿川八十瀬の波はわけもせで わたらぬ袖のぬるゝころかな
                       (玉葉和歌集 十五雑 奨子内親王)
 
忘れめや神のいがきの榊葉に ゆふかけそへし雪のあけぼの
                  (新葉和歌集 九神祇 祥子内親王後醍醐皇女)
 
△廃絶
万代といのる心はけふそへん いつきの宮の跡をたづねて(伊勢紀行)
 
△雑載
やしまもるくにつみ神も心あらば あかぬわかれの中をことわれ
くにつかみそらにことわる中ならば なほざりごとをまづやたゞさん
ふりすてゝけふはゆくともすゞか川 やそせのなみに袖はぬれじや
すゞか河八十瀬のなみにぬれぬれず いせまでたれか思ひおこせん
                           (以上 源氏物語 十賢木)
 
くれたけの世々のみやこときくからに 君はちとせのうたがひもせず
伊勢のうみちひろの浜にひろふとも 今はかひなくおもほゆるかな
                             (以上 大和物語 上)
 
君やこしわれやゆきけんおもほえず 夢かうつゝかねてかさめてか
かきくらすこゝろのやみにまどひにき 夢うつゝとはこよひさだめよ
かち人のわたれどぬれぬえにしあれば(末なし)
千はやぶる神のいがきもこえぬべし おほみや人のみまくほしさに
こひしくはきてもみよかし千はやぶる 神のいさむるみちならなくに
                             (以上 伊勢物語 下)
 
おもふ事なるといふなるすゞか山 こえてうれしきさかひとぞきく(拾遺和歌集 八雑)
 
わかれゆくみやこのかたの恋しきに いざむすび見んわすれゐの水
                        (千載和歌集 八羇旅 斎宮甲斐)
 
神垣のあたりとおもふゆふだすき 思ひもかけぬ鐘の声かな
                      (金葉和歌集 九雑 六條右大臣北方)
 
かへさじとかねてしりにきから衣 こひしかるべきわが身ならねば(同 前斎宮内侍)
 
△殿舎
いつか又いつきの宮のいつかれて しめのみうちにちりをはらはん(山家集 下雑)
 
△雑載
ことしおひのみかはの池のあやめ草 ながきためしに人もひかなん(斎宮女御集)
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