25b 神木を詠める和歌
 
△桜
神風にこゝろやすくぞまかせつる さくらの宮の花のさかりを(西行物語 中)
 
あさくまやいはねの桜としふれど はなのかゞみのかげぞくもらぬ
                   (夫木和歌抄 三十四神祇 荒木田尚良神主)
 
名をもおもへさくらの宮にいのりみん 花をちらさぬ神風も哉
                            (同 皇太后宮大夫俊成)
 
桜大刀の天の往古を残てや 宮樹の花の雲と見ゆらん(詠大神宮二所神祇百首和歌)
 
△梅
こちふかばにほひおこせよ梅のはな あるじなしとて春を忘るな
梅のはなぬしをわすれぬ物ならば 吹らん風ぞことづてもせん(以上 北野縁起 上)
 
こちふかばにほひおこせよ梅のはな あるじなしとて春なわすれそ
ふるさとの花の物いふ世なりせば いかにむかしのことをとはまし
                         (以上 古今著聞集 十九草木)
 
神垣にむかしわがみし梅の花 ともに老木となりにける哉
                        (金葉和歌集 九雑 大納言経信)
 
鴬のはねをやとひて飛梅の かごにはいかでのらで来にけん(九州道の記 玄旨法印)
 
△椿
色かへぬしら玉椿みの山に 神や八千代のたねをうゑけむ(木曽路名所図会 二 利綱)
 
みの山のしら玉椿いつよりか とよのあかりにあひはじめけん
                       (新拾遺和歌集 六冬 従二位行家)
 
△藤
今も又咲添藤の花を見よ 末になるともさかへあるとは(鹿島宮社例伝記)
 
△雑載
人もみなかづらかざして千早振 神のみあれにあふひ成けり(紀貫之集 四)
 
光出るあふひの影をみてしかば 年へにけるも 嬉しかりけり
                      (後拾遺和歌集 十九雑 選子内親王)
 
諸かづら二葉ながらも君にかく あふひや神のしるし成らん(同 入道前太政大臣)
 
たれしかもまつのおやまのあふひぐさ かづらにちかくちぎりそめけん
                        (夫木和歌抄 七夏 順徳院御製)
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