25a 神木を詠める和歌
 
神風や五百枝の雪の春に来て 杉のしるしの少しみえつゝ
                         (詠大神宮二所神祇百首和歌)
 
世を守神のしるしか今も猶 しげる千枝の杉のした陰
             (新続古今和歌集 二十神祇 勝定院贈太政大臣足利義持)
 
かしまのやひばらすぎ原ときはなる 君がさかえは神のまにまに
                   (夫木和歌抄 三十四神祇 前中納言定家卿)
 
あさ日さすかしまのすぎにゆふかけて くもらずてらせよをうみのみや
                               (同 西行上人)
 
ときはなるみかみの山の杉むらや 八百万代のしるしなるらん
                       (千載和歌集 十賀 藤原季経朝臣)
 
千早ぶるかしひの宮のあやすぎは 幾代か神のみそぎ成らん(桧垣嫗集)
 
千早振かしひの宮の杉のはを 二度かざす我君ぞきみ
                       (金葉和歌集 九雑 神主大膳武忠)
 
五とせはしるしの杉につかへてき 今年は梅の花のみやこへ(玄々集)
 
年毎に匂ひまされる梅花 おなじ色にてすぎをかざゝん
色かへぬときはの杉は我国の ながけき宮のしるしなりける(以上 源道済集)
 
千早振かしひの宮のあや杉は 神のみそぎにたてる成けり(新古今和歌集 読人不知)
 
千磐破香椎の宮のあや杉は 神の御衣木に立てるなりけり(鋸屑譚)
 
△松
大はらやをしほの松もけふこそは 神代のこともおもひ出らめ(伊勢物語 下)
 
大はらや小塩の山のこ松ばら はや木高かれ千世のかげみん
                          (後撰和歌集 二十賀 貫之)
 
相生のをしほの山の小松原 いまより千代のかげをまたなん
                        (新古今和歌集 七賀 大弐三位)
 
二葉より神をぞ頼むをしほ山 我も相生の松の行末(続千載和歌集 九神祇 狛秀房)
 
神がきのとしふる松にことよせて ひとよにつもる野べの白雪
                     (夫木和歌抄 三十四神祇 参議長成卿)
 
いのりこふことのしるしと北野なる うへのかきねの松ぞみえける
                             (同 太宰大弐高遠)
 
天降るあら人神の相生を 思へば久し住吉の松(古今神学類編 二十七祭物)
 
われ見ても久しくなりぬ住吉の 岸のひめ松いく世へぬらん
まつまじと君はしら浪みづがきの 久しき代よりいはひ初てき(以上 伊勢物語 下)
 
住吉の岸のひめ松人ならば いく世かへしととはまし物を
                      (古今和歌集 十七雑 よみ人しらず)
 
いまみてぞ身をばしりぬるすみの江の 松よりさきにわれはへにけり(土佐日記)
 
住吉のきしもせざらん物故に ねたくや人にまつといはれん(拾遺和歌集 十神楽)
 
天くだるあら人神のあひおひを おもへば久しすみよしの松(同 安法法師)
 
君が代の短かるべきためしには 兼てぞ折し住吉の松(太平記 三十)
 
春をふる百枝の松のいつよりか 子日とて引今日のためしを
                         (詠大神宮二所神祇百首和歌)
 
あとたれし其神松の風よりや 豊あし原はなびき初けん
                   (熱田神社問答雑録 蔵人式部大丞清原秀賢)
 
いつよりや植置松のかげ高く それとはしるし神垣のうち(同 藤原直元)
 
神も松を千よのためとやうゑつらん よはひをのぶる松のみやしろ
                              (同 長岡真人守氏)
 
さゞ波や神代の松のそのまゝに むかしながらのうら風ぞ吹
                     (新後撰和歌集 十神祇 前大納言為氏)
 
いにしへに神の御舟を引き掛けし 梢や今の唐崎の松
                       (続千載和歌集 九神祇 祝部行氏)
 
神代よりかはらぬ松も年ふりて みゆき久しきしがの幸崎
                      (新拾遺和歌集 十六神祇 法印延全)
 
おのづから千とせもふべしからさきの 松にひかるゝみそぎなりせば(唐崎松乃記)
 
たれをかもしる人にせん高砂の まつも昔のともならなくに
                        (古今和歌集 十七雑 藤原興風)
 
幾世にかかたり伝へんはこざきの 松の千歳のひとつならねば
                          (拾遺和歌集 十神楽 重之)
 
はこ崎の松はまことのみどりにて かしゐの方もつみはきこえず(散木葉歌集 五羇旅)
 
跡たれていく世へぬらん箱崎の しるしの松も神さびにけり
                     (新拾遺和歌集 十六神祇 按察使顕朝)
 
一木にはいかにさだめし箱崎の 松はいづれも神のしるしを(宗祇法師集 雑)
 
△梛ナギ
みくまのゝなぎの葉しだり降雪は 神のかけたるしでにぞ有らし(金槐和歌集)
 
なぎの葉にみがける露のひや玉を むすぶの宮やひかりそふらん
                     (夫木和歌抄 三十四神祇 検校法親王)
 
ちはやぶるくまのゝの宮のなぎの葉を かはらぬちよのためしにぞひく
                              (同 前中納言定家)
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