19 祭具を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△榊
神がきのみむろの山のさか木ばは 神のみまへにしげりあひにけり(古今和歌集)
霜やたびおけどかれせぬさかきばの たちさかゆべき神のきぬかも(同)
さかきばのかをかぐはしみとめくれば やそうぢ人ぞまどゐせりける
(拾遺和歌集 十神楽)
榊葉に千代の小松をとりそへて けふより祭る住吉の神(祭主輔親卿集)
あだに見し庭の桜はちらずして しめの榊の色かへてけり(同)
△注連シメ
月にとふ君が心を御清縄 かけてたのむる末の遥けさ(詠大神宮二所神祇百首和歌)
春はまだ残れるものを桜花 しめの中には散にけるかな(続古事談 二臣節)
あめにますとよをかひめの宮人も わが心ざすしめをわするな(源氏物語 二十一乙女)
祝部ハフリらが斎ふ社の黄葉モミヂバも 標縄シメナハ越えてちるちふものを
(萬葉集 十秋相聞)
ふぢふ野のかたちが原にしめはやし なよやしめはやしなよや
しめはやしいつきいはひしもしるく 時にあへるかも時にあへるかもや(以上 催馬楽)
三輪山の杉のふる木のみしめなは かけきや人をつれなかれとは(新撰和歌六帖 五)
ちはやぶる神もしりきにゆふだすき しめのほどかくはなれざらなん(藤原清正集)
しめのうちは身をもくだかず桜花 をしむ心を神にまかせて(建礼門院右京大夫集 上)
しめの外も花とし云はん花はみな 神にまかせてちらさずもがな(同)
△鈴
やをとめのふるてふすゞのころころと なゝのやしろは宮居せりとぞ
(新撰和歌六帖 二)
神歌や鈴ふりたつる声までも 月澄わたる里かぐら哉(七十一番歌合 下)
△忌瓮イハヒベ
ひさかたの 天原アマノハラより 生アれ来たる 神の命ミコト 中略 斎戸イハヒベを いはひほ
りすゑ たかたまを しゞにぬきたれ しゝじもの 膝をりふせ 中略
(萬葉集 三雑歌)
わがやどに 御諸ミモロを立てて 枕辺マクラベに 斎戸トハヒベをすゑ たかだまを まなくぬ
きたれ 下略(同 三挽歌)
たらちねの 母の命ミコトは 忌戸イハヒベを 前にすゑ置きて ひとてには 木綿ユフ取り持
たし ひとてには にぎたへまつり たいらけく まさきくませと 天地の 神祇カミに
こひのみ 下略(同 三挽歌)
わがおもへる 妹によりては 言コトのいみも なくありこそと 斎戸イハヒベを いはひほ
りすゑ たかたまを まなくぬきたれ 天地の 神祇カミをぞわがのむ いたもすべなみ
(同 十三相聞)
くさまくらたびゆくきみをさきくあれと いはひべすゑつあがとこのべに(同 十七)
ありめぐり 事しをはらば つつまはず かへりきませと いはひべを とこべにすゑ
て 中略(萬葉集 二十)
△槲カシハ
みの山にしゞにおひたる玉かしは とよのあかりにあふがたのしさやあふがたのしさや
(催馬楽)
△葉椀・葉盤ヒラテ
やひらでを手のとりもちてわれからかみの からをきせんやからをきせんや(神楽歌)
神山のまさきのかづらくるひとぞ まづやひらでのかずはかくなる(和泉式部集 五)
てがしはにひらでをさしてこし人の いのりいでゝし人はみるらむ(相模集)
かみ山のかしはのくぼてさしながら おひなほる身の栄えともがな(同)
しもがれやならのひろ葉をやひらでに さすとぞいそぐ神のみやつこ
(新勅撰和歌集 九神祇 恵慶法師)
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