20 占を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△太占フトマニ
武蔵野にうらへかたやきまさでにも のらぬきみがなうらにでにけり
(萬葉集 十四東歌)
△太占卜法
むさし野にうらへかたやきまさでにも のらぬきみがなうらにでにけり
かぐ山の葉若がしたにうらとけて かたぬくしかのこゑきこゆなり
(以上 奧儀抄 下之下)
むさし野にうらへかたやきまさでにも のらぬきみが名うらにでにけり(袖中抄 七)
△亀卜キボク卜法
むさし野にうらへかたやきまさでにも のらぬきみが名うらにでにけり
はゝかびにちかへるかめのうらぐしや ためとはしるはきみがあへるか
おもひかねかめのますらにことゝへば ためあひたりときくぞうれはき
(以上 袖中抄 七)
△亀卜雑載
わたつみの かしこきみちを やすけくも なくなやみきて いまだにも もなくゆか
むと ゆきのあまの ほつてのうらへを かたやきて やかむとするに いめのごと
みちのそらぢに わかれするきみ 中略(萬葉集 十五)
かなふやと亀のますらにとはゞやな 恋しき人を夢にみつるを
(堀河院御時百首和歌 右近権少将師時)
思ひあまりかめのうらへにこととへば いはぬもしるき身の行衛哉
(夫木和歌抄 二十七雑 権僧正公朝)
△雑卜(米占)
きねがとるそのくましねに思事 見つてふかずをたのむばかりぞ(権中納言俊忠卿集)
△雑卜(夕占)
夕卜ユフケにも占ウラにものれる今夜コヨヒだに 来まさぬ君をいつとか待たむ(萬葉集 十一)
こと霊ダマの八十ヤソの衢チマタに夕占ユフケ問ふ 占ウラまさにのれ妹にあはんよし
玉桙のみちゆき占ウラに占なへば 妹にあはんとわれにのりつる
あはなくに夕卜ユフケを問ふと幣ヌサに置くに わが衣手はまたぞつぐべき
夜占ユフケ問ふわが袖に置く白露を きみに視せむと取ればけにつゝ(以上 同 十一)
木国キノクニの 浜によるとふ 鰒珠アハビタマ ひりはむと云ひて 妹の山 せの山越えて
行きし君 いつ来まさむと 玉桙の 道に出で立ち 夕卜ユフウラを わが問ひしかば 夕
卜ユフウラの われに告ノるらく 吾妹児ワギモコや 汝ナが待つ君は おきつなみ 来よるしら
たま へつなみの よするしらたま 求むとぞ 君が来まさぬ ひりふとぞ きみは来
まさぬ ひさならば 今七日ナヌカばかり 早からば 今二日フツカばかり あらむとぞ 君
はきこしし なこひそ吾妹ワギモ(同 十三)
杖つきもつかずもわれは行かめども きみが来まさむ道の知らなく(同)
さにつらふ 君がみことと 玉梓タマヅサの 使ひも来コねば おもひやむ わが身一つぞ
ちはやぶる 神にもなおほす 卜部ウラベすゑ 亀もな焼きそ 恋ひしくに いたきわが
身ぞ いちじろく 身にしみとほり むらきもの 心くだけて 死なむ命イノチ にはかに
なりぬ 今更に 君がわをよぶ たらちねの 母のみことか もゝたらず 八十ヤソの衢
チマタに 夕占ユフケにも 卜ウラにもぞ問ふ 死ぬべきわがゆえ(同 十六有由縁并雑歌)
卜部ウラベをも八十の衢も占ウラ問へど 君をあひ見むたどき知らずも(同)
妹もわれも こゝろはおやじ たぐへれど 中略 したごひに おもひうらぶれ かど
にたち ゆふけとひつつ わをまつと なすらむ妹を あひて早見む(同 十七)
こぬまでもまたまし物をなかなかに たのむかたなきこのゆふけかな
(後拾遺和歌集 十二恋 読人不知)
あふことをとふやゆふけのうらまさに つげのをぐしのしるしみせなん(新撰六帖 五)
△辻占
辻や辻四辻がうらの市四辻 うら正しかれ辻うらの神(本津草 地)
△石占
なゆたけの とをよる皇子ミコ 中略 天地の 至れるまでに 杖つきも つかずもゆき
て 夕衢ユフケ問ひ 石卜イシウラをもちて わがやどに 御諸ミモロを立て 下略
(萬葉集 三挽歌)
石神のうらにをとはん此くれに やまほとゝぎす聞やきかずや
(久安六年御百首 中納言右衛門督公能)
あふことをとふ石神のつれなさに わがこゝろのみうごきぬるかな
(金葉和歌集 八恋 前斎院六條)
△足占
月夜ツクヨには門カドに出で立ち夕占ユフケ問ひ 足卜アウラをぞせしゆかまくをほり
(萬葉集 四相聞)
月夜ツクヨよみ門カドに出で立ち足占アウラして ゆくときさへや妹にあはざらむ(同 十二)
△三角柏占
みわそゝぐみつのがしはのしだりはの ながながしよをいはひきにけり
(夫木和歌抄 二十九雑 鴨長明)
神風やみつのがしはにとふことの しづむにうくはなみだなりけり
(夫木和歌抄/伊勢記)
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