17 幣帛ミテグラ・ヘイハクを捧げて詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△名称
みてぐらはわがにはあらずあめにます 豊をか姫の神のみてぐら神のみてぐら
みてぐらにならましものをすべ神の 御手にとられてなづさはましをなづさはましを
                                (神楽歌 採物)
 
△丹寸手ニギテ
しらにぎて千種の枝に取かさね うたへばあくる天の岩川(堀河院御時百首和歌)
 
やみのうちににぎてをかけし神あそび あか星よりや明初にけん
                            (久安六年御百首 御製)
 
天雲の むかふす国の 武士モノノフと 云はれし人は 皇祖カミロギの 神の御門に とのへ
に 立ちさもらひ 内のへに 仕へまつりて 玉葛タマカヅラ 弥イヤ遠トホ長く 祖オヤの名も
継ぎゆくものと おも父に 妻に子等コドモに 語らひて 立ちにし日より たらちねの
母の命ミコトは 斎ひべを 前にすゑおきて ひとてには 木綿ユフ取りもたし ひとてには
にぎたへまつり 平らけく まさきくませと 天地の 神祇カミにこひのみ 下略
                               (萬葉集 三雑歌)
 
△白砂幣
神まつるやどのうのはな白たへの みかぐらかとぞあやまたれける
                           (拾遺和歌集 二夏 貫之)
 
△由布
さかき葉にゆふしでかけてたがよにか 神のみまへにいはひそめけむ
                             (拾遺和歌集 十神楽)
 
ゆふかけておもはざりせば葵草 しめのほかにぞ人をきかまし(和泉式部集 三)
 
しめの内をなれさりしよりゆふだすき 心は君にかけてしものを(同)
 
春の日も光ことにやてらすらん 玉ぐしの葉にかくるしらゆふ
                      (風雅和歌集 三 皇太后宮大夫歳成)
 
かしこまるしでに涙のかゝるかな 又いつかはと思ふあはれに
                       (玉葉和歌集 二十神祇 西行法師)
 
△奴左ヌサ
ありねよし対馬の渡りわたなかに 幣ヌサ取りむけて早かへりこね(萬葉集 一雑歌)
 
佐保過ぎてならのたむけに置く幣は 妹をめかれずあひ見しめとぞ(同 三雑歌)
 
ちはやぶる神の社に我がかけし 幣はたばらん妹にあはなくに(同 四相聞)
 
ちはやふる かみのみさかにぬさまつり いはふいのちはおもとゝがため(同 二十)
 
此たびはぬさもとりあへず手向山 紅葉のにしき神のまにまに
                   (古今和歌集 九羇旅 すがはらの朝臣道真)
 
わたつみのちぶりの神にたむけする ぬさのおひ風やまずふかなん(土佐日記)
 
あだ人の手向にをれる桜花 あふ坂まではちらずもあらなん
                     (後撰和歌集 十九離別 よみ人しらず)
 
春霞たちわかれゆく山みちは 花こそぬさとちりまがひけれ
                       (拾遺和歌集 一春 よみ人しらず)
 
いまぞしる手向の山は紅葉ばの ぬさとちりかふ名にこそありけれ
                       (千載和歌集 五秋 藤原清輔朝臣)
 
からにしきぬさにたちもて行秋も けふや手向の山路こゆらん(同 瞻西上人)
 
さと人のおほぬさこぬさたてなめて むまはたむすぶのべに成ぬる
                       (夫木和歌抄 二十二雑 西行上人)
 
いまひとめいもをみむろの神にこそ ぬさとりむけていのりわたらめ
                          (同 三十二雑 衣笠内大臣)
 
あふさかの関もる神にたむけせし ぬさのしるしはこよひなりけり
                          (同 皇太后宮大夫俊成卿)
 
△衣服為幣
しろたへのころもはかみにゆづりてん へだてぬ中にかへしなすべく
から衣なれにしつまをうちかへし わがしたがひになすよしもがな
なつ衣たつやとぞ見るちはやぶる かみをひとへにたのむみなれば
                              (蜻蛉日記 下之下)
 
△兵器為幣
よる山の人のまもりにするほこを 神のみまへにいはひつるかないはひたてたる
                                (神楽歌 採物)
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