10a お祭りを詠める和歌
△鎮魂祭
思ひあまり出にし玉の有ならむ よふかくみえば玉むすびせよ(伊勢物語 下)
なげきわび空にみだるゝわがたまを むすびとゞめよしたがひのつま(源氏物語 九葵)
あくがるゝわがたましひもかへりなん おもふあたりにむすびとゞめば
(狭衣物語 三下)
玉しひのかよふあたりにあらずとも むすびやせまししたがへのつま(同)
たまはみつぬしはたれともしらねども 結びとゞめよしたがひのつま(袋草紙 四)
今さらに忍びぞわぶるほとゝぎす もとつ人よとねのみなかれて(馬内侍集)
身からこそとにもかくにもあくがれめ かよはむたまのをだみだにする(同)
世にもみなあくがれにたるたまなれば うらなきつまにとまる物かは(同)
△鎮花祭
のどかなる春のまつりの花しづめ 風をさまれと猶いのるらし
(新拾遺和歌集 十六神祇 関白前左大臣)
△雑祭
あめにますかさまのかみのなかりせば ふりにし中をいかでとはまし(実方朝臣集)
△同(月待)
廿日あまり見し夜の月を待えてや 心のやみの雲はらふらん(藤原為和卿集)
柿のたねの形にをがまれ玉ひけり あまげもつかず八ツしぶの月(我おもしろ 上)
客よってねむいめをして月も見ず こや三損のむだといふらむ(同)
△同(酉待)
よい婿をとり待ちの中御贔屓に おや子いもせのともにひやくまで(我おもしろ 上)
△同(初午)
はつ午の太鼓にあらで鳴る耳の おとろふる身もはやしとぞ思ふ(我おもしろ 上)
初午のどろつくなかに商ひの 道はぬからぬあめのふりうり(同)
△同(紫野今宮祭)
白妙のとよみてぐらをとりもちて いはひぞ初る紫の野に
(後拾遺和歌集 二十神祇 藤原長能)
今よりはあらぶる心ましますな 花の都にやしろさだめつ(同)
△同(筑摩祭)
あふみなるつくまのまつりとくせなむ つれなき人のなべのかずみむ(伊勢物語 下)
あふみなるつくまの祭とくせなん つれなき人のなべのかずみん(和歌色葉集)
おぼつかなつくまの神のためならば いくつかなべのかずはいるべき
(後拾遺和歌集 十八雑 藤原顕綱朝臣)
夜とゝもになみだをのみもわかすかな つくまのなべにいらぬ物ゆゑ(清輔朝臣集)
いかにせんつくまの神もうづもれて つみせんなべの数ならぬ身を
(散木葉歌集 六神祇)
△同(鵜坂祭)
いかにせんうさかのもりにみはすとも 君がしもとのかずならぬ身を
(散木葉歌集 六神祇)
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