09a 大嘗祭を詠める和歌
ときはなるかむなび山の榊葉を さしてぞいのるよろづよのため
(千載和歌集 二十神祇 藤原義忠朝臣)
みつぎ物はこぶよほろをかぞふれば にまの里人かずそひにけり
(金葉和歌集 五賀 藤原家経朝臣)
苗代の水はいな井にまかせたり 民やすげなる君が御代かな(同 高階明頼)
うちむれてたかくら山につむ物は あらたなるよのとみ草の花
(詞花和歌集 十雑 藤原家経朝臣)
うごきなき千世をぞいのるいはや山 とる榊葉のいろかへずして
(千載和歌集 二十神祇 藤原経衡)
いにしへの神の御代よりもろがみの 祈るいはひはきみが世のため
(同 前中納言匡房)
石根山やま藍にすれる小忌衣 袂ゆたかに立ぞうれしき
(新千載和歌集 二十慶賀 前中納言匡房)
板くらの山田につめるいねをみて をさまれる世のほどをしるかな
(詞花和歌集 十雑 左京大夫顕輔)
神うくるとよのあかりにゆふぞのゝ 日かげかづらぞはえまさりける
(千載和歌集 二十神祇 宮内卿永範)
すべらきをやほよろづよの神も皆 ときには守る山の名ぞこれ(同)
みしまゆふかたにとりかけ神なびの 山のさかきをかざしにぞする
(同 権中納言兼光)
神代よりけふのためとや八束穂に ながたのいねのしなひそめけむ
(増鏡 一おどろの下)
もろ神のこゝろにいまぞかなふらし きみを八千代といのるまことは
(千載和歌集 二十神祇 藤原季経朝臣)
ちとせやま神の代させる榊葉の さかえまさるはきみがためとか(同 藤原光範朝臣)
すがのねのながらの山のみねの松 ふきくる風もよろづよのこゑ
(増鏡 一おどろの下)
いにしへに名をのみきゝてもとめけむ 三神の山はこれぞそのやま(同 四三神山)
すゑとほき千世のかげこそ久しけれ まだ二葉なる岩さきの松(同)
色かへぬ黒かみ山の山かづら かくてやひさにつかへまつらん
(新千載和歌集 二十慶賀 従二位行家)
いにしへにやゝたちまさる御たからの 新井の里はにぎはひにけり
(同 前大納言俊光)
「悠紀は
かけつみて千くらにあまるいねなれば つきせぬ御代のためしにぞつく
(永和大嘗会記)
「主基は
なかとみのむらあはせ田にしめぬきて 万代ふへきはつほをぞつく(同)
「悠紀
いくよろづかぎりもしらず年をつむ 千くらのいねのはつほをぞつむ(親基日記)
世にこゆる君が千とせのためしには 阪田のいねのはつほをぞぬく(同)
「主基
すゑひさにちぎりてぞつくすむ民も 吉田の村の鶴のこのいね(同)
はるばるときびの山中ふもとなる ゆにはのいなばぬきつゝぞゆく(同)
「悠紀稲舂うた、近江国松本村
万津裳止之 牟良能波都穂乎 奴岐曽女弖 那保与呂津世乃 多免志楚登都久
(友俊記)
「主基の方、丹波の国並賀村なる稲穂舂歌
須遍良幾能 千与能波志女仁 都岐曽牟留 奈見賀乃牟良濃 屋津賀穂乃伊禰(同)
「悠紀方・・・・・美尾山朝日初昇
あきらけき代のはつ春はのどかにも のぼる朝日をみ尾のやまのは
(以寧卿記 正二位藤原朝臣胤定)
「亀岡松樹多生
かめをかに千もとの松の生ぬれば やほよろづ世のはるにさかえむ(同)
「梅原花樹盛開行人見之
ゆくひともめでゝぞすぐる梅のはら なにおふはなのふかきいろかを(同)
「朝妻山桜漸開
ひもときしあさづま山のさくらばな かすみをわけてかをりそめぬる(同)
「藤江杜藤花多淀有祭神之人
かみのますふぢ江のもりの藤かづら ちとせをかけてあふぐはふりこ(同)
「朝日郷民屋卯花得所
たみのとのさかふるときとあきらけき あさひのさとにさけるうのはな(同)
「筑摩江採菖蒲
つくま江にしげるあやめのながきねを きみがやちよのためしにぞひく(同)
「志賀浦納涼人望之
なにたかきまつのこかげのゆふすゞみ すゞしさそふるしがのうらかぜ(同)
「河上郷行六月祓
かはかみのさとのながれのきよきせに きみよろづよとみそぎをぞする(同)
「蒲生野萩花芳開鹿来遊
さきみちしはぎのにしきをわけきつゝ しかもかずかずあそぶかまふ野(同)
「鏡山明月清澄
すゑひさにうごかぬみよのかゞみ山 かげあきらけく月にみがきて(同)
「秋富村秋稼得年
よろづたみあきとみむらにつむいねの としゆたかなる御代あふぐなり(同)
「鳥篭山谷水菊花浮秋
千世しめてとこの山べにさくきくの はなのかふかくうつすたにみづ(同)
「石戸山有紅樹
きみが代のつきせぬあきをちぎりにて いはとの山にそむるもみぢ葉(同)
「笠原郷時雨敷降
君がめぐみさしてぞあふぐ笠はらの さとももらさずうるふしぐれを(同)
「安川千鳥群遊
ともちどりなれてこゝろもやす川に 君を八千世とよばふこゑごゑ(同)
「泉川有運調物之人
あめのしたたのしきみよにいづみ川 霜をいとはずはこぶおほにへ(同)
「位山白雪積表豊年之瑞
わがきみがあまつ日つぎのくらゐ山 ゆたけさ見せて雪もつもれる(同)
[次へ進んで下さい]