04a 自然の神などを詠める和歌
 
△荒神
ねぎごとをきかずあらぶる神だにも けふはなごしと人はしらなん(源順集)
 
さばへなすあらぶる神もおしなべて けふはなごしのはらへなりけり
                         (拾遺和歌集 二夏 藤原長能)
 
あし原やほたるかゞやく神までも とびちるばかりはらへするなり
                        (夫木和歌抄 九夏 権僧正公朝)
 
△煩神
いざなぎのぬぎし衣をなきものを などあふ事にわづらひの神
                      (夫木和歌抄 三十四神祇 法橋顕昭)
 
△市神
市姫の神のいがきのいかなれや あきなひものに千代をつむらん(為頼朝臣集)
 
△動植物為神
いとこ なせの君 をりをりて 物にいゆくとは 韓国カラクニの 虎と云ふ神を いけど
りに 八頭ヤツとりもちて来 その皮を たゝみに刺し 下略(萬葉集 十六有由縁并歌)
 
△器物称神
あしびきの山田のそほづおのれさへ われをほしといふうれはしきこと
                     (古今和歌集 十九誹諧 よみ人しらず)
 
あけくらしまもるたのみをからせつゝ たもとそほづの身とぞなりぬる
                       (後撰和歌集 五秋 よみ人しらず)
 
山田もるそうづの身こそあはれなれ あきはてぬればとふ人もなし
                       (続古今和歌集 十七雑 僧都玄賓)
 
山田もるそほづも今はながめすな 船やかたよりほさき見ゆめり(曽根好忠集)
 
△高天原
天アマの原ふりさけ見れば大王オホキミの みいのちは長く天たらしたり(萬葉集 二挽歌)
 
天地の 初めの時し 中略 高ひかる 日の皇子ミコは 中略 天原アマノハラ 石門イハトを開
き 神カム上がり 上がりいましぬ 下略(同)
 
ひさかたの 天原アマノハラより あれ来たる 神の命ミコト 奥山の 賢木サカキが枝に 白香シラ
ガ付け 木綿ユフ取り付けて 下略(同 三雑歌)
 
やほよろづよもの神たちあつまれり たかまがはらにきゝたかくして(金槐和歌集)
 
△黄泉国
父母が なしのまにまに はしむかの 弟オトの命ミコトは 中略 黄泉ヨミの界に はふ蔓ツタ
の おのがむきむき 天雲の わかれしゆれば 下略(萬葉集 九挽歌)
 
葦屋アシノヤの うなひをとめが 中略 倭文シヅたまき いやし吾が故 丈夫マスラヲの あら
そふ見れば いなりとも あふべくあれや しゝくしろ 黄泉ヨミにまたんと こもりぬ
の したはへおきて うちなげき 妹がいぬれば 下略(同)
 
まことにや君がつかやをやぶるなる 世にはまされるこゝめありけり
                      (続詞花和歌集 二十戯咲 僧都仲胤)
 
△神国
光をば玉くしの葉にやはらげて 神の国とも定てしがな
                     (続後撰和歌集 九神祇 土御門院御製)
 
日の本は神のみ国ときゝしより いますがごとく頼むとをしれ
                     (風雅和歌集 十九神祇 前大僧正慈鎮)
 
天地のひらけしよりやちはやぶる 神の御国といひはじめけん
                       (新拾遺和歌集 十六神祇 源智行)
 
△惟神カンナガラ
やすみしし わが大王オホキミ 神カムながら 神さびせすと 芳野川 たぎつ河内カフチに 高
殿タカドノを 高知りまして 中略 山川も よりてつかふる 神の御代かも
                               (萬葉集 一雑歌)
 
山川もよりてつかふる神カムながら たぎつ河内カフチに船出せすかも(同)
 
やすみしし わが大王 高ひかる 日の皇子ミコ 荒妙アラタヘの 藤原がうへに をす国を
めして賜はむと みあらかは 高しらさむと 神カムながら おもほすなべに 天地も
よりてあれこそ いははしる あふみの国の ころもでの 田上山タナガミヤマの 眞木マキさ
く 桧ヒのつまでを もののふの 八十氏河ヤソウヂガハに 玉藻なす うかべながせれ 中
略 新代アラタヨと 泉の河に 持ち越せる 眞木のつまでを ももたらず いかだにつく
り のぼすらむ いそはく見れば 神随カムナガラならし(同)
 
天地の 初めの時し 中略 高ひかる 日の皇子ミコは 飛鳥の 浄キヨミの宮に 神随カム
ナガラ ふとしきまして 天皇スメロギの しきます国と 天原アマノハラ 石門イハトを開き 神カム
上がり 上がりいましぬ 下略(同 二挽歌)
 
やすみしし わが大王 高光る 日の皇子 ひさかたの 天宮アマツミヤに 神随カムナガラ 
神といませば そこをしも あやにかしこみ 中略 ふしゐなげけど あきたらぬかも
                                     (同)
 
葦原の 水穂の国は 神カムながら ことあげせぬ国 しかれども 辞コトあげぞわがすれ
中略 ももへ波 ちへ浪しきに ことあげするわれ(同 十三相聞)
 
あきつしま やまとの国を 中略 しらしくる 天アマの日継ぎと 神カムながら わが皇
オホキミの 天下アメノシタ をさめ賜へば 下略(同 十九)
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