02a 神を詠める和歌
△天神地祇
天雲アマグモの むかふす国の ものゝふと いはれし人は 中略 おも父に 妻に子ども
に 語らひて たちにしひより たらちねの 母の命ミコトは 中略 たいらけく まさき
くませと 天地の 神祇カミにこひのみ いかならん 歳月日にか つゝじ花に にほへ
る君が ひくあみの なづさひ来んと 立ちてゐて 待ちけん人は 中略 いかさまに
おもほしませか うつせみの をしきこの世を 露霜の 置きていにけん 時ならずし
て(萬葉集 三挽歌)
みかの原 たびのやどりに たまぼこの 道のゆきあひに 天雲の よそのみ見つゝ
言コト問はん よしの無ければ こゝろのみ むせつゝあるに 天地の 神祇カミことよせ
て しきたへの ころもでかへて おのづまと たのめる今夜コヨヒ 秋の夜の 百夜モモヨ
の長く ありこせぬかも(同 四相聞)
天地の神も助けよ草枕 たび行く君が家に至るまで(萬葉集 四相聞)
念はぬを思ふといはば天地の 神祇カミも知らさむ邑礼左変(同)
神代より 云ひつてらく 中略 唐モロコシの とほき境に つかはされ まかりいでませ
うな原の 辺ヘにもおきにも 神カムづまり うしはきいます もろもろの 大御神等タチ
船フナのへに みちびきまをし 天地の 大御神等 倭の 大国霊ミタマ ひさかたの あま
のみそらゆ あまがけり 見渡したまひ 中略 つゝみなく さきくいまして はや帰
りませ(同 五雑歌)
世の人の たふとみねがふ 七種ナナクサの 宝も我れは 何せんに 中略 天神アマツカミ あ
ふぎこひのみ 地祇クニツカミ ふしてぬかづき かからずも かかりも神の まにまにと
立ちあざり 我がこひのめど しばらくも よけくはなしに やゝやゝに かたちくつ
ほり 中略 手に持てる あがことばしつ 世間ヨノナカの道(同)
あしびきの み山もさやに 落ちたぎつ 芳野ヨシヌの河の 河瀬カハノセの きよきを見れば
中略 玉葛タマカヅラ 絶ゆることなく 万代ヨロヅヨに かくしもがもと 天地の 神をぞい
のる かしこかれども(同 六雑歌)
あきつしま 倭の国は 神カムがらと 言コトあげせぬ国 しかれども われは事あげす
天地の 神もはなはだ わがおもふ 心知らずや 中略 まそ鏡 まさめに君を あひ
見てばこそ わが恋やまめ
菅根スガノネの ねもころごろに わがもへる 妹イモによりてば 中略 天地の 神祇カミを
ぞわが祈ノむ いたもすべなみ(同 十三相聞)
乾地アメツチの神をいのりてわがこふる きみにかならずあはざらめやも(同)
いかにしてこひやむものぞ天地の 神をいのれどあは思ひます(同 十三問答)
天地の神をも吾はいのりてき 恋とふものはかつてやまずけり(同)
見がほれば 雲井に見ゆる うるはしき とはの松原 わくごども いざわ出で見む
ことさけば 国にさけなむ ことさけば いへにさけなむ あめつちの 神しうらめし
草枕 このたびのけに 妻さくべしや(同 十三挽歌)
あめつちのかみをこひつゝあれまたむ はやきませきみまたばくるしも(同 十五)
あめつちのかみなきものにあらばこそ あがもふいもにあはずしにせめ(同 十五挽歌)
葦原の みづほの国を あまくだり しらしめしける すめろぎの 神のみことの 御
代かさね 中略 鶏が鳴く 東国アヅマノクニの みちのくの 小田ヲダなる山に 金クガネあ
りと まうしたまへし 御心を あきらめたまひ 天地の 神あひうづなひ 皇御祖スメ
ロギの 御霊ミタマたすけて 遠き代に かゝりしときを わが御世に あらはしてあれば
御食国ヲスクニは さかえむものと かむながら おもほしめして 中略(同 十八)
おほなむぢ すくなひこなの 神代より いひつぎけらし 中略 天地の かみことよ
せて 春花の さかりも安良多之家牟 ときのさかりぞ(同)
天地の 神はなかれや うるはしき わが妻さかる 光神ヒカルカミ なるはたをとめ てた
づさひ 共にあらんと おもひしに こゝろたがひめ 中略(同 十九)
あめつしのいづれのかみをいのらばか うつくしはゝにまたこととはむ(同 二十)
あめつしのかみにぬさおきいはひつゝ いませわがせなあれをしもはば(同)
わがせこしかくしきこさばあめつちの かみをこひのみながくとぞおもふ(同)
さゞなみの国つみ神のうらさびて 荒れたる京ミヤコ見れば悲しも(同 一雑歌)
みちのなかくにつみかみはたびゆきも ししらぬきみをめぐみたまはな(同 十七)
国つ神そらにことわる中ならば なほざりごとをまづやたゞさん(源氏物語 十榊)
△天神七代地神五代
ちはやぶる七代五代の神世より わがあし原にあとをたれにき
(新後撰和歌集 十神祇 太上天皇(後宇多))
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