03 神々を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△日神月神
天地の 初めの時し ひさかたの 天河原アマノカハラに 八百万ヤホヨロヅ 千万神チヨロヅカミの
神カム集ひ 集ひいまして 神カムはかり はかりし時に 天アマ照らす 日女ヒルメの命ミコト
天アメをば しろしめすと 葦原の 水穂ミヅホの国を 天地の よりあひのきはみ しろ
しめす 神の命と 天雲の 八重かきわけて 神カム下り いませまつりし 下略
                               (萬葉集 二挽歌)
 
あまてらす かみの御代より やすのかは なかにへだてゝ むかひたち そでふりか
はし いきのをに なげかすこら 中略(同 十八)
 
いかばかりよきわざしてかあめなるや ひるめの神をしばしとゞめん(神楽歌)
 
さゝのくまひのくま川にこまとめて しばし水かへかげをだに見ん
                           (古今和歌集 二十大歌所)
 
月読ツキヨミの光に来ませあしびきの 山をへだてゝ遠からなくに(萬葉集 四相聞)
 
月読ツキヨミの光はさやに照らせれど まどへるこゝろたへじとぞおもふ(同)
 
海原の道とほみかも月読ツキヨミの 明かり少なき夜ヨはくだちつゝ(同 七雑歌)
 
天橋アマバシも 長くもがも 高山も 高くもがも 月よみの 持ちこせる水を いとり来
て きみにまつりて 越えんとしはも(同 十三雑歌)
 
月よみのひかりをきよみ神じまの いそまのうらゆ船出すわれは(同 十五)
 
月よみのひかりをきよみゆふなぎに かこのこゑよびうらまこぐかも(同)
 
天アメに坐マす月読をとこまひはせむ 今夜コヨヒの長さ五百夜イホヨ継ぎこそ(同 六雑歌)
 
み空ゆく月読をとこ夕さらず 目には見れどもよるよしも無し(同 七譬喩歌)
 
△雨神
この里は丹生の川上程ちかし いのらばはれよ五月雨のそら
                     (新葉和歌集 十六雑 後醍醐天皇御製)
 
わが里に大雪ふれり大原の ふりにしさとにふらまくは後ノチ(萬葉集 二相聞)
 
わが岡のおかみに言ひてふらせたる 雪のくだけしそこにちりけむ(同)
 
△雷神
伊香保ねにかみななりそねわがべには ゆゑはなけども児らによりてぞ
                              (萬葉集 十四東歌)
 
ちはやぶるかみにもあらぬわが中の 雲ゐはるかになりもゆくかな
                      (後撰和歌集 十四恋 よみ人しらず)
 
きみをのみおもひやりつゝかみよりも こゝろのそらになりしよひかな
                       (拾遺和歌集 十九雑恋 村上天皇)
 
△むすびの神
まもれたゞちぎりむすぶの神ならば とけぬうらみに我まよはさで(十六夜日記)
 
人しれぬむすぶの神をしるべにて いかゞすべきとなげく下紐(空穂物語 楼の上)
 
ちとせとはわれならねどもゆふだすき むすぶの神もいのりかくらん(元輔集)
 
君見ればむすぶの神ぞうらめしき つれなき人をなにつくりけん
                     (拾遺和歌集 十九雑恋 よみ人しらず)
 
心さへむすぶの神やつくりけん とくるけしきも見えぬ君かな
                         (詞花和歌集 七恋 能因法師)
 
とけやらぬ人の心はつらからで むすぶの神をうらみつるかな
                      (夫木和歌抄 三十四神祇 藤原伊行)
 
△修理シュリ国土神
大なむぢ 少彦名の神こそは 名づけそめけめ 名のみを なご山とおひて わが恋の
千重チヘの一重も なぐさまなくに(萬葉集 六雑歌)
 
大なむぢすくな御神ミカミの作りしゝ 妹せの山をみらくしよしも(同 七雑歌)
 
おほなむぢ すくなびこなの 神代より いひつぎけらし 父母を 見ればたふとく 
妻子メコ見れば かなしくめぐし 中略(同 十八)
 
月見ればすくなみかみぞうらめしき 西には山をつくらざりせば(散木葉歌集 三秋)
 
△現人神アラヒトガミ
いそのかみ ふるの尊ミコトは 中略 住吉スミノエの 荒人神 ふなのへに うしはき賜ひ 
下略(萬葉集 六雑歌)
 
あまくだるあら人がみのあひおひを おもへば久しすみよしの松
                       (拾遺和歌集 十神楽歌 安法法師)
 
おもひいづやなき名たつ身はうかりきと あら人神になりし昔を(十訓抄 十)
 
あまくだるあらひとがみのあひおひを おもへば久しすみよしのまつ(袖中抄 十四)
 
すべらぎもあらひと神もなごむまで なきけるもりのほとゝぎすかな(同)
 
おもひいづやなき名をたつはうかりきと あら人がみもありはむかしを(同)
 
くもるべきうきよの末をてらしてや あら人神はあまくだりける
                     (続後撰和歌集 九神祇 前大僧正慈鎮)
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