02 神を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△神
うつせみし 神にたへねば 離れゐて 朝なげく君 さかりゐて わが恋ふる君 玉な
らば 手に巻持ちて きぬならば ぬぐときも無く わが恋 君ぞきぞの夜 夢イメに見
えつる                            (萬葉集 二挽歌)
 
わが祭る神にはあらずますらをに とめたる神ぞよくまつるべき(同 三雑歌)
 
ちはやぶる神のたもてる命イノチをも たれがためにか長くほりせん(同 十一)
 
たまちはふ神もわれをば打つてこそ しゑやいのちのをしけくもなし(同)
 
わぎもこにあがこひしなばそわへかも かめにおほせむこゝろしらずて(同 十四東歌)
 
さにづらふ 君がみことと 玉梓タマヅサの つかひも来コねば おもひやむ わが身一つ
ぞ ちはやぶる 神にもなおほせ 卜部ウラベすゑ 亀もな焼きそ 恋しくに 痛きわが
身ぞ 下略(同 十六)
 
人しれずわれこひしなばあぢきなく いづれの神になき名おほせん(伊勢物語 下)
 
わが国はよるひる守る神しあれば たのむぞやがて祈るなりける
                       (続古今和歌集 七神祇 藤原道家)
 
皆人のいのるこゝろもことわりに そむかぬみちを神やうくらん
                       (玉葉和歌集 二十神祇 藤原為守)
 
一すぢにうきをもいかになげかまし 神にまかせぬわが身なりせば
                       (続千載和歌集 九神祇 津守国助)
 
大かたの世をしづかにと祈るこそ 神のこゝろにまづかなふらめ
                           (同 後近衛関白前右大臣)
 
君が代をいのるかたにはみしめ縄 神のこゝろもさこそひくらめ
                     (続後拾遺和歌集 二十神祇 津守国夏)
 
神やしる世のためとてぞ身をもおもふ 身のためにして世をば祈らず
                     (新拾遺和歌集 十六神祇 伏見院御製)
 
すむ空ににごるはつちとわかれにし そのいにしへも神ぞしるらん
                     (新続古今和歌集 二十神祇 足利義持)
 
八百よろづそこらの神のとしなみに よるひるまもる君が御代かな
                              (同 前中納言匡房)
 
△神世
高山は ねびをゝしと みみなしと あひあらそひき 神代より かくなるらし いに
しへも しかなれこそ 虚蝉ウツセミも 嬬ツマをあらそふらしき(萬葉集 一雑歌)
 
大王オホキミのとほの朝庭ミカドとありがよふ しまとを見れば神代しおもほゆ(同 三雑歌)
 
鶏が鳴く 東国アヅマノクニに 高山は さはにあれども ふた神の たふとき山の なみた
ちの 見がほし山と 神代より 人の言ひつぎ 国見する つくばの山を 下略(同)
 
神代より 云ひつてけらく 虚ソラみつ 倭国は 皇神スメガミの いいつくしき国 言霊
コトダマの さきはふ国と かたりつぎ いひつがひけり 中略(同 五雑歌)
 
神代より芳野の宮にありがよひ たかしらせるは山河をよみ(同 六雑歌)
 
やすみしし わが大王オホキミの 高しかす 日本ヤマトノ国は 皇祖スメロギの 神の御代より 
しきませる 国にしあれば 下略(同)
 
八千桙ヤチホコの 神の御代より もも船の はつるとまりと 八島国 ももふなびとの 
定めてし みぬめの浦は 下略(同)
 
久方の天アマ照る月は神代にか いでかへるらむ年はへにゝ(同 七雑歌)
 
やましろのくぜのさど坂神代より 春ははりつゝ秋はちりけり(同 九雑歌)
 
葦原の 水穂の国に たむけすと あもりましけん 五百万イホヨロヅ 千万神チヨロヅカミの
神代より 云ひつぎ来たる かむなびの 三諸山ミモロヤは 下略(同 十三雑歌)
 
おほなむぢ すくなびこなの 神代より いひつぎけらし 父母を 見ればたふとく 
妻子メコ見れば かなしくめぐし 中略(同 十八)
 
かけまくも あやにかしこし 皇神祖スメロギの かみの大御世に 田道間守タヂマモリ 常世
トコヨにわたり やほこもち まゐでこしとき 中略(同)
 
ちはやぶる神代もきかずたつた川 からくれなゐに水くゝるとは
                         (古今和歌集 五秋 業平朝臣)
 
大原やをしほの山もけふこそは 神代の事をおもひいづらめ
                         (同 十七雑 なりひらの朝臣)
 
天の戸のあけし昔をうつしきて 神代にかへすあさくらのこゑ
                      (新千載和歌集 十神祇 伏見院御製)
 
住吉の松のことのはかはらずは 神代にかへれしき島の道(同 藤原長秀)
 
△神世七代
あめつちのひらけしときのあしかびや 神の七代のはじめなるらん
                       (新千載和歌集 十神祇 法印定為)
[次へ進んで下さい]