松舘菅原神社例祭奉納神楽
[松館天満宮三台山獅子大権現舞]

 
「お湯立て神事」(平成11年4月25日例祭奉納の例)
 
 次は探湯式、すなわち「お湯立て神事」を奉納する。この神事には舞の他にいろいろ な所作をも行うものであるが、一連の「神楽舞」として取り扱うととする。
 
 神域にある大釜に煮えたぎっている斎湯は、占事の現れる清浄かつ厳粛なものでなけ ればならない。すなわち、八十禍津日神、大禍津日神、神直日神、大直日神、及び産土 大神の神霊を仰ぐ斎湯なのである。
 従ってこの神事は、山伏の装束及び頭巾を着け、修験道の作法によって行う。舞人似 鳥治男は、御前に進み出て、二拝二拍手一拝の作法によって拝礼する。
 まず塩で自身及び祭場、そして斎湯を清め奉る。続いて斎湯に神酒を献じ奉る。
 
「藁太総(藁束房)舞・作占いの儀」
 藁太総は、長さ約一尺五寸、直径一寸の稲藁束を撚り、それを二つに折って太く短い 縄状にした束で、先は切り揃えて束子状にしたものである。一対が神域の手前の左右の 木杭に仮結びしてある。
 舞の曲は、四拍子を基本とする「お湯立ての曲」に替わる。
 
 藁太総舞は、その藁太総をそれぞれ両手に持って斎湯に浸して潜らし、続いてそれを 両手に合わせて奉持し、願をこめる。この舞は、藁太総によって護身法の九字を切り、 五大尊を結び、真言を唱えて神を勧請する舞である。本年の稲作を占う。
 一度目は、藁太総を左右の手に合わせて奉持し、斎湯に浸し潜らし一礼して願をこめ る。
 右手の藁太総を前方上空に差し上げて右回りに舞い廻る。左手は腰に置く。次に左手 の藁太総を前方上空に差し上げて左回りに舞い廻る。右手は腰に置く。舞はゆっくりと かつ厳かに舞う。つまり二拍子ごとに一歩を進めるのである。これを三回繰り返す。
 そして次に大釜の間近に至り、右手の藁太総を用いて斎湯を右回りに掻き廻して渦を 作る。廻す早さは次第に速くなる。それに合わせて笛や太鼓の調子が速くなる。最速に なったところで、すかさず藁太総を真っ直ぐ引き抜く。そのときの斎湯の泡の芯の立ち 具合によって、早稲の出来具合を占うのである。
 
 二度目は、藁太総を左右の手に合わせて奉持し、願をこめる。
 左手の藁太総を前方上空に差し上げて左回りに舞い廻る。右手は腰に置く。次に右手 の藁太総を前方上空に差し上げて右回りに舞い廻る。左手は腰に置く。これを三回繰り 返す。
 そして次に大釜の間近に至り、左手の藁太総を用いて斎湯を左回りに掻き廻して渦を 作る。最速になったところで、すかさず藁太総を真っ直ぐ引き抜く。そのときの斎湯の 泡の芯の立ち具合によって、中稲の出来具合を占う。左回りが不得手のときは、右回り とすることもあるとのことである。
 三度目は、藁太総を左右の手に合わせて奉持し、願をこめる。
 右手の藁太総を前方上空に差し上げて右回りに舞い廻る。左手は腰に置く。次に左手 の藁太総を前方上空に差し上げて左回りに舞い廻る。右手は腰に置く。これを三回繰り 返す。
 そして次に大釜の間近に至り、二束の藁太総を右手に合わせ持って斎湯を右回りに掻 き廻して渦を作る。最速になったところで、すかさず藁太総を真っ直ぐ引き抜く。その ときの斎湯の渦の芯の立ち具合によって、晩稲の出来具合を占う。
 斎湯の渦の波が穏やかになったところで、藁太総二束を両手に奉持して一礼し、藁太 総を左右の木杭の許に置く。
 ちなみに、今回(平成十一年)の占は「早稲」と出たとのことである。同年のこの郷 内の稲作は、極めて豊作であったという(この年は全国的にも豊作であった)。
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