11 用語解説
 
                      参考:小学館発行「万有百科大事典」
 
〈能の用語〉
上ゲ哥アゲウタ
 上音を基調とした謡いどころ。シテの出の謡、最初の地謡、道行に用いる七五調の韻
 文。抒情や叙景の内容。細かな節付けで、独吟にも用いる。
 
一セイイッセイ
 普通、五・七五・七五の句法を執る謡。シテやワキが登場しての第一声であることが多
 い。またその出を囃す囃子を一セイと云う。
 
イロエ
 静かな囃子で、シテが舞台を優雅に一巡する動作。情緒の揺蕩タユタイを示すような場合
 に挿入される。女性の役に多い。
 
哥ウタ
 次第、上ゲ哥、下ゲ哥、キリ、ロンギなど、七五調を基本とした謡の構成要素の称。
 
男舞オトコマイ
 武士などの素顔の男性の役が舞う、力強く速度テンポの速い舞。笛と太鼓・小鼓が囃す(
 『安宅』『小袖曽我』など)。
 
楽ガク
 舞楽を象った、ゆったりと、然も律動的リズミカルな異国的エキゾチックな感じの舞。唐人や仙
 人などが舞う。笛と大・小・太鼓が囃す(『邯鄲』『唐船』など)。太鼓の加わらぬ楽
 もある。
 
カケリ
 修羅道の苦患や、狂女の興奮を表す躍動的ダイナミックな動作。大・小鼓に笛が加わる。緩
 急が激しい(『八島』や『隅田川』など)。
 
葛桶カズラオケ
 舞台で登場人物が腰掛ける、漆塗りの円筒形のもの。床几ショウギに掛けると云う。位の
 ある人物の表現。狂言ではこの蓋だけを酒盃にも用いる。
 
語り
 物語のこと。シテやワキなどが一場の物語をする部分。心持や緩急、抑揚などが節の
 付いた謡より難しいとされる。能の中で間アイ狂言が語り手ナレーターとして語る例も多い。
 
神舞カミマイ
 『高砂』など若い男体の神が舞う。気品高く颯爽サッソウとした位の速い舞。笛を主に大・
 小・太鼓が力一杯演奏する。
 
急ノ舞キュウノマイ
 能の中で最も位の速い、緊迫した舞。笛を主に大・小鼓が囃す(『道成寺』など)。
 
キリ
 一番の能の終結部分を云う。必ず律動リズムに合った謡である。
 
クセ
 先行芸能の曲舞クセマイを能の始祖観阿弥が能に導入したもの。能の表現の中心部分。謡
 と囃子の複雑な律動リズムの面白さが生命。地謡によってシテの舞うクセ(舞グセ)と、
 シテがじっと坐ったまま動かぬクセ(居グセ)とがある。
 
位クライ
 能の演出基準を云う言葉。曲の文学的内容、上演の難易、主人公の身分などを総合し
 た概念で、演技、演奏の速度テンポ他、全ての表現を支配する。位が重い、位が軽いと
 云うように用いる。
 
クリ
 クセの序に当たる高い調子の謡。クリ→サシ→クセと接続する。
 
小書コガキ
 特殊演出のこと。番組の曲名の左下に小さく書き添えるのでこの称がある。面・装束や
 囃子ばかりか、脚本自体にも変化の及ぶものがある。
 
子方コカタ
 少年の演ずる役。子供の役の他、天皇や義経の役などを子方にするのは、少年の無心
 の演技に気品を表現し、またシテを大写しクローズアップする能独特の手法。
 
下ゲ哥サゲウタ
 低い調子で謡われる短い一節。上ゲ哥の序に当たることが多い。
 
サシ
 さらさせと律動リズムを執らずに謡う謡。
 
地謡ジウタイ
 六乃至十二人による能の斉唱団。いわゆる地の部分を舞う。能の語り手ナレーター役とも云
 える。狂言にもときに地謡の出る曲がある。
 
次第シダイ
 七五・七五・七四の定形句による謡。登場人物が最初に舞う例が多い。またその出を囃
 す囃子も次第と云う。地謡による次第(地次第)もある。
 
序ノ舞ジョノマイ
 ゆったりとして典雅な舞。美女、老女、美男の霊、草木の精が舞う。笛を主に大・小鼓
 が囃す。太鼓が加わると華やかになる。
 
中ノ舞チュウノマイ
 序ノ舞の端正さに対し、中庸の速度で舞われる情緒的な舞。美女、狂女、遊狂の僧、
 天女、妖精などが舞う。楽器構成は序ノ舞に同じ。
 
天女ノ舞テンニョノマイ
 世阿弥が秘事として力説した天女ノ舞は今日伝わらず、ツレの天女の役の舞う短めの
 中ノ舞を云う。
 
中入ナカイリ
 扮装を替えて再登場するために、登場人物が一旦橋掛ハシガカリから退場すること。舞台
 の作り物に中入することもある。
 
名ノリナノリ
 素顔の男性の役が述べる自己紹介。節の付いた謡われる名ノリは女性や老人、神や妖
 怪などに例が多い。
 
習い物ナライモノ
 伝習や発表に特別の伝授を要する難しい曲や演奏。何段階もの順位ランク付けがある。
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