0704紅葉狩
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈紅葉狩モミジガリ〉
「紅葉」
 @秋に、木の葉が赤や黄色に色付くこと。また、その葉。
 Aカエデの別称。
 B「もみじば」の略。
 
「楓カエデ」
 カエデ科の落葉高木の総称。葉は多くは掌状で、初め緑色、秋に赤・黄色に紅葉する
が、全く葉の裂けないもの、複葉になるもの、また紅葉しないものもある。4〜5月頃、
黄緑色や暗紅色の多数の小花を着け、後に2枚の翼を持った果実を付ける。材は器具・細
工物にする。わが国にはイタヤカエデ・イロハカエデなど種類が多い。モミジ。
 
「紅葉狩」
 能の曲名。五番目物(切能物)。観世信光作。出典未詳。
 まず、舞台中央後方に一畳台を出し、その上に紅葉を着けた山の作り物を設える。秋
の半ば、信州の戸隠山で、貴婦人姿の女(前シテ)が数人の侍女達(ツレ)と共に、紅
葉を眺めて休んでいる。其処へ、弓矢を持った平維茂タイラノコレモチ(ワキ)が、太刀持の従
者(ワキツレ)と竿を持った勢子セコ達(ワキツレ)とを引き連れ、鹿狩りにやって来る。
維茂の命を受けて従者が木陰に休む女のことを尋ねると、侍女(アイ)は、ただ高貴の
人とのみ答える。これを聞いて馬から下りて遠回りで通り過ぎようとする維茂を、女が
引き止め、酒を薦め、舞(中之舞)を舞う。女は夜と共に維茂が転ウタた寝をする姿を見
るや、闇に消え去る(作り物の中へ中入する)。維茂の夢の中に末社の神(アイ)が現
れ、その枕元に太刀を置いて行く。維茂が目を醒ますと、身の丈一丈の鬼(後シテ)が
現れる。維茂は格闘の末この鬼を捕らえる。
 
 維茂の戸隠山鬼退治を主題とし、前場で鬼が優美な女に化け、維茂を誑タブラかす意図
を見せる能。
 前場は女が、素知らぬ顔で行き掛ける維茂の袖に手を掛けて引き止め、また、舞の途
中で維茂の熟睡を確かめてから急に調子を早めて舞うなど、見所が多い。この舞を、流
儀により序之舞にする演出もある。またツレが舞の前半を舞い、後場でツレの鬼が五人
出る小書演出(鬼揃オニゾロイ)もある。後シテは、鬼畜を表す面・顰シカミを懸け、強い鬼の
姿にする場合が多いが、般若ハンニャの面を懸けて鬼女の姿にする演出もある。本曲は、ワ
キが活躍する点、作り物に巧みに活用している点、動きが多く見せ場をふんだんに作っ
てある点など、作者信光の特徴をよく発揮した能と言える。
 なお、本曲は、明治二十年(1886)河竹黙阿弥作詞により歌舞伎舞踊劇に作られた。
義太夫・常磐津・長唄の三方掛合の大作で、鬼女・九世市川団十郎、維茂・初世市川左団次
により初演。「新歌舞伎十八番」の一つ。
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