0407鶴亀
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈鶴亀〉
「鶴」
 ツル目ツル科の鳥の総称。古来長寿の動物として尊ばれた。大形で頸・脚ともに長い。
沼地・平原などに群棲し、地上に営巣・産卵。わが国ではタンチョウ・マナヅル・ナベヅル
などを産するが現在では何れも稀。タンチョウを単にツルともいう。古名、たず。
 
「亀」
 カメ目の爬虫類の総称。体は背腹両面に甲羅があり、両甲は側面で接着して、前後で
頭・尾・四肢が出入できる箱状になっている。歯はない。水中又は陸上に棲み、植物・魚貝
などを食い、水辺の砂地に穴を掘って産卵。リクガメを除き、水中を泳ぐのはうまい。
長く飢渇に耐える。首を曲げて甲羅に収める曲頸類と潜頸類とに大別。世界に200種以上
が分布。爬虫類のうち最も起源が古く、化石として発見される種類が多い。わが国では
鶴と共に長寿の動物として目出度いものとされる。かめのこ。
 
「鶴亀」
 能の曲名。初番目物(脇能物)。喜多流では『月宮殿ゲッキュウデン』と云う。作者未詳。
 舞台には一畳台の上に引立ヒッタテ大宮が設えてある。ときは新春、処は月宮殿である。
まず官人(アイ)が出て皇帝が月宮殿へ行幸する旨を一般に告げる(狂言口開クチアケ)。
厳かな囃子(真シンノ来序ライジョ)によって皇帝(シテ)を先頭に、大臣(ワキ)、従臣達
(ワキツレ)が登場、一同は天下泰平の世を祝う。そこへ鶴と亀(ツレ二人又は子方二
人)が出て舞を舞い(中チュウ之舞)、帝も舞楽を奏して自ら舞う(楽ガク)。年の始めの、
目出たさを表した曲。
 
 鶴と亀とは、ツレとして大人が演ずる場合は、鶴は天女の姿で面は小面コオモテ、亀は若
い神の姿で面は邯鄲男カンタンオトコを用いる。子方として演ずる場合は同姿で直面ヒタメンであ
る。普段の演出ではクセの部分を持たないが、小書演出「曲入クセイリ」(宝生流)になる
と、シテは一畳台から下りてクセを舞う。一場物であり直面物である点、脇能としては
唯一の例である。
 本曲は長唄・常磐津・地唄などに作られており、中でも十世杵屋六左衛門作曲の長唄『
鶴亀』(1851)は、謡曲の詞章をそのまま採っているが、変化のある節付で長唄代表曲
の一つとなっている。
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