0306獅子舞
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈獅子舞シシマイ〉
「ライオン」
 ネコ科の哺乳類。体長約1.8m。普通茶褐色で毛は短い。尾の端に黒い毛の総フサがある。
頭が大きく、成長した雄には鬣タテガミがあるが、雌は鬣がなく体もやや小さい。百獣の王
と云われる。草原に雌を中心とする家族群で生活、大形動物を捕食。アフリカからイン
ドに広く分布していたが、南アフリカの一部・モロッコなど絶滅した地域が多い。獅子。
 
「獅子舞」
 獅子頭シシガシラを被って演ずる動物擬態の民俗芸能。頭はライオンに模した獅子頭の他
鹿・羚羊カモシカ・熊・猪・竜・虎などに擬して作られたものもあり、様々である。芸能の形態と
しては基本的に一人立ちと二人立ちに分類される。一人立ちは一頭を一人で構成するも
ので、頭上に獅子頭を頂き、多くは腹部に羯鼓カッコ或いは太鼓を下げて打ち鳴らしながら
踊る。最低三頭は出、これを一人立ち三匹獅子と云うが、五頭、六頭、八頭、多い処で
は十二頭も出ることがある。獅子踊と云う処もあり、また鹿・羚羊系の頭を使用する処で
は鹿踊と書く例が多い。しかしシカ踊と読む場合は少なく、シシ踊と読むのが普通であ
る。もう一つは二人立ちで一人が獅子頭を手で捧げ持ち、また前脚の役目を果たし、他
の一人が尻部と後脚の役目を受け持つものである。この場合二人の間は頭に付けられた
胴体の幕で覆われ、遣い手は見えない。この方がより一段と動物擬態的である。一頭の
場合もあるが、二頭一組の処が多い。処によっては稀に四頭、五頭と多数が一組になっ
て出る。一般に一人立ちの獅子頭は小さい。二人立ちの場合は大きく、殆どライオン系
の獅子(唐獅子)で、非常に大きく作られたものもあり、数人から数十人もが胴体幕の
中に入る巨大な獅子(静岡県掛川)もある。頭を殊更に虎とし、全体も全く虎に模倣し
たものがあり、自ら虎舞と云うのも僅かながら見られる。
 
 獅子舞は東日本に多く、南九州ではまず見られないが、ほぼ全国的に散在して見られ
る。古来から信仰的な意義を以って迎えられているためと考えられる。一人立ちと二人
立ちでは違った出自や過程があるらしい。一人立ちはわが国独自の出と見られ、二人立
ちは中国からの伝来である。一人立ちはアニミズム(宗教の原初的な超自然観の一つ)
に由来するものらしく、例えば『万葉集』巻十六所載の越中ノ国の歌「弥彦イヤヒコ 神の
麓に 今日らもか 鹿カの子やすらむ裘カワコロモ著て 角著きながら」辺りから既に動物擬
態の面影が窺える。シシはカノシシ(鹿)やイノシシ(猪)のシシで、食用の獣を指し
ている。肉をもたらす反面、放っておくと田畑に害ももたらす。また田の害虫を食して、
益ありと見られることもある。いろいろの解釈の結果、土地の守護神の化身たる霊獣と
なって、霊威の発動を期待する時に芸能化して行ったのである。こうした素地と中国の
獅子観が容易に結合して、より広い根強い存在となったと考えられる。二人立ちの獅子
は奈良時代に伎楽や舞楽や散楽の一曲として渡来して来た。『信西古楽図』に絵が描か
れている他、『教訓抄』など様々の古文献に現れている。古くは師子と書いた。非常に
威力ある霊獣との観念から悪魔払いのために芸能化された。『万葉集』巻十六に「韓国
カラクニの虎とふ神」と虎も認識されており、虎舞(岩手県釜石)も例外的にこの仲間に入
っていた。
 
 一人立ちは東日本に広く分布し、関東地方は概ね三匹獅子で、獅子(埼玉県横瀬)や
竜(埼玉県豊里)の頭が多い。花笠役が四名立って山や林となりその間で舞う。東北地
方では八頭編成(岩手県一関)を中心に多数で、鹿頭が多い。中立ナカダチを核に一頭は雌
ジシであり、踊り歌を歌いつつ「雌じしかくし」など数曲を演ずる。羯鼓や太鼓を付け
ないものもある。この場合身体を覆う幕が大きく、幕踊系と云う(岩手県田野畑)。盆
や彼岸の供養、雨乞いなどに踊られる。有名な新潟の角兵衛獅子は子供の一人立ち曲芸
獅子である。二人立ちはほぼ全国的に見られるが、西日本に多い。沖縄では全体が芭蕉
や麻の繊維などの縫包み状で中国風であるが、本土では僅かの例外(福岡県甘木)を除
いて、単に布幕で胴を形成するだけである。舞楽(大阪市四天王寺)、田楽(茨城県金
砂神社)、神楽(島根県佐陀神社)など古い伝統の中で行われていたり、伊勢太神楽
ダイカグラ(三重県桑名)のような散楽風な曲芸獅子が残されている。
 
 同じ太神楽獅子でも尾張(愛知県)熱田神宮の流れを汲む江戸の獅子は江戸前に粋な
洗練を見せ、正月の祝儀に街々を巡って歩く。諸社の祭礼で神輿に奉納することもある
が、平安末期の祇園会には既にそうした形式があった。東北地方では権現獅子(岩手県
大迫)として崇められ、火伏せの舞を舞ったり、時には墓獅子(岩手県八戸)として死
者の霊の供養を行うこともある。東海地方や長野方面には獅子芝居(長野県牧村)など
と云う獅子頭を被ったまま、歌舞伎擬ミドきの芝居を演ずるものもある。
 
関連リンク 「権現舞」考
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