030580紫根染
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈紫根染シコンゾメ〉
「紫ムラサキ」
 @紫とは、ムラサキ科の多年草。高さ約50p。日当りの良い草地に自生。最近は稀少。
夏、白色の小花を開く。根は紫色、乾燥したものが生薬ショウヤクの紫根シコンで、解毒剤・皮膚
病薬とする他、昔は重要な紫色の染料とした。ねむらさき・みなしぐさ・むらさきそう。
 A紫とは色の名。ムラサキの根で染めた色。赤と青との間色。
 
「紫根染」
 紫根染(紫染)とは、紫の根を原料とする染め物である。
 
〔染色〕
 紫の根はシコニンと呼ばれる色素を含み、昔から紫染の原料として用いられる。『万
葉集』にも詠まれている。
 紫染ムラサキゾメは、搗き砕いて粉にした紫根シコンを木桶に入れ、これに水を加えて揉むと
紫色の染液が出来るので、その中に布を入れ、それを取り出してサワフタギ又はツバキ
の灰汁アクで媒染すると云う作業を交互に数十回も繰り返し、3〜7日もかけて完了する。
根の分量、液の温度、灰汁の濃度などによって色調が違ってくるので、特殊な技術を必
要とする。
 
〔薬用〕
 紫黒色の根を紫根と称して、漢方では解熱、解毒剤として、麻疹マシン、皮膚病に用い
る。外用としては華岡青洲ハナオカセイシュウの創方である紫雲膏シウンコウ(潤肌膏ジュンキコウ)が有名
で、紫根と当帰トウキを主薬としたこの軟膏は、火傷、凍傷、罅ヒビ、皹アカギレ、切り傷など
に大変よく効く。その色素はアセチルシコニンと云い、殺菌、肉芽形成促進作用がある。
中国から輸入している軟紫草ナンシソウは、新疆省シンキョウショウに産する同科の新疆ムラサキグサ
の根である。
 
関連リンク 「日本人の創った色(紫」
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