0302鷺
参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
〈鷺サギ〉
「鷺」
コウノトリ目サギ科の鳥の総称。形はツルに似、やや小さく、飛翔時に首を縮める。
眼の周囲は裸出し、尾羽は短い。樹上に巣を営み、主に魚類を捕食。世界に約60種、わ
が国には約15種が分布。雪客セッカク。
「鷺」
能の曲名。四番目物又は五番目物(切能物)。世阿弥作とも伝えられるが未詳。『源
平盛衰記』の「蔵人クランド取鷺事サギヲトルコト」を典拠とする。
まず官人(アイ)が登場、王が神泉苑シンセンエンで夕涼みをする旨を告げる(狂言口開
クチアケと云う)。王(ツレ)が大臣(ワキツレ)、従臣(ワキツレ数人)、輿舁コシカキ(ワ
キツレ二人)、そして蔵人(ワキ)を引き連れて神泉苑へ着く。王は池の洲崎にいる白
鷺(シテ)を捕らえて来るよう大臣に命じ、その命を受けた蔵人は鷺を捕りに行く。鷺
は一旦飛び去るが、勅諚であると聞くと、喜んで舞い戻る。蔵人はこれを王に捧げ、王
は蔵人に爵を、そして鷺には五位の位を賜る。鷺は羽を羽ばたかせて舞(乱ミダレ)を舞
い、やがて何処かへ飛び去る。
鷺を人格化し、その清らかな舞を見せる能である。特に筋と云うべきものはなく、品
位と風格だけで舞う舞であり、一方、慶祝の趣が強い能でもある。シテは、全て白一色
の扮装で、清浄無垢の姿を表す。従って、シテは元服前の少年又は還暦後の老人に限っ
て許され、青年・中年の演者は舞わない慣例となっている。宗家以外の演者は、七十歳以
上に限るとか、又は装束の中に白以外の色を一色用いるとか云う定めを持つ流儀もある。
直面ヒタメンを原則とするが、面を用いるときは、延命エンメイ冠者カンジャ又は邯鄲男カンタンオトコ・若
男ワカオトコの面を懸ける。白い長絹チョウケン(上着)を羽毛のように翻ヒルガエして舞う鷺の舞は
「乱ミダレ」と云い、『猩々ショウジョウ』の特別な演出の場合、即ち『猩々乱』(又は『乱』
)の舞と共に、普段とは変わった足遣いをする特殊な舞である。ワキ方の小書「真シン之
型」と称し、十一人のワキツレが登場する演出もある。なお王のツレを子方にする場合
も多い。
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