020257唐草模様
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈唐草カラクサ模様〉
「草」
 木質があまり発達しないで軟らかい茎を有する植物。草本。
 
「唐草模様」
 蔓草模様を総称して唐草模様と呼んでいるが、中国伝来の蔓草と云う意味で名付けら
れたものであろう。また、絡み草の略語であるとする説もある。『宇津保物語』に「唐
草、鳥など彫り透して・・・・・・」と云う文章があるから、平安時代には既にこの名称が使
われていたことが分かる。
 唐草模様の起源は大変古く、その分布状態は驚く程広い範囲に及んでいる。古代エジ
プトのロータス・ロゼット、メソポタミアのパルメットなどを弧線や渦巻線で繋いだ最も
古い唐草、次いでそれらを集大成し、律動的リズミカルな形式に展開して行ったギリシャの
唐草、やがてこれにアカンサスの要素が採り入れられ、これがローマへと受け継げられ
て行った。こうした西方系の唐草がシルクロードを通って中国に入って来たのは六朝時
代のことである。更に朝鮮半島を通り、わが国に渡来したのは古墳時代末期で、その後、
主として仏教美術の装飾模様として広く愛用された。
 唐草模様を植物の種類によって分類すると次のようになる。
 
(1) 忍冬ニンドウ唐草
 古墳時代後期から飛鳥時代にかけて大陸から入って来た模様である。扇状に広がった
唐草の葉が忍冬に似ているところからこの名がある。法隆寺献納御物の金銅潅頂幡縁飾
(七世紀)の忍冬文が有名である。
(2) 宝相華唐草
 中国においては唐・宋代に、わが国では奈良時代から平安時代にかけて流行した。
(3) 葡萄唐草
 葡萄の実や葉・蔓を唐草の主題モチーフに採り入れた模様である。前九世紀のアッシリアの
模様が最も古く、前四世紀頃ギリシアに伝わり、ヨーロッパではローマ時代以後、キリ
スト受難の象徴として、多くの聖堂の内部装飾や石棺の装飾に用いられた。中国には後
漢末から六朝時代に伝えられ、やがてわが国でも飛鳥・奈良時代に流行した。法隆寺金堂
天蓋(七世紀後半)、薬師寺本尊の台座(八世紀中頃)などが有名である。
(4) 蓮唐草
 蓮の花・葉・蕾・実などを唐草形式に纏めた模様。仏教美術と共に、西域・中国を経て飛
鳥時代に渡来し、主に仏像の光背や、華鬘ケマン・華篭ケコ・経箱・経巻の見返しなど、仏具類
の装飾に用いられた。
(5) 牡丹唐草
 わが国では鎌倉時代頃に、この模様が多く見られる。中国では蓮唐草と同じように、
世俗的な織物や陶磁器の装飾などにも使われている。
 その他にもいろいろあるが、何れにしても、唐草の生命とも云うべき抽象的な律動
リズムは、日本人の感覚にとって異質的なものであったためか、平安時代を過ぎると仏具
装飾以外にはあまり好まれなくなって行った。わが国の唐草は花文中心のものか、それ
とも今日風呂敷に見るような動きのない曲線模様の何れかである。
 
関連リンク 「陶芸の世界(文様のいろいろ)」
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