0202蝸牛
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈蝸牛カギュウ〉
「蝸牛カタツムリ」
 マイマイ目の陸生有肺類巻貝の一群の総称。オナジマイマイ・ウスカワマイマイ・ナミ
マイマイ・ミスジマイマイなど種類が多い。5〜6階から成る螺旋ラセン形の殻があり、大部
分は右巻。頭部の2対の触角のうち長い方の先端にある眼で明暗を判別する。雌雄同体、
卵生。湿気の多い時又は夜、樹や草に這い上がって若葉などを食う。わが国に約700種。
でんでんむし・ででむし・まいまい・まいまいつぶり。
 
「蝸牛カギュウ」
 狂言の曲名。出羽デワの羽黒山ハグロサンから出た山伏(シテ)が、大和の葛城山カズラキサン
で修行を積んでの帰り道、竹薮の中で一寝入りして休む。其処へ、主人から言い遣って、
長寿の薬になると云う蝸牛カタツムリを探し求めに来た太郎冠者が出会デクワす。太郎冠者は蝸
牛がどんなものかを知らず、ただ主人から、薮ヤブに居て頭が黒く、腰の貝を付けてお
り、角を出すものだとだけ聞いていたので、黒い兜巾トキンを戴いた山伏をそれと思い込
み、声を掛ける。山伏は太郎冠者をからかってやろうと、貝を見せたり、角を出す真似
をしたりするので、冠者は益々信じ込んで、連れて行こうとする。山伏は、それでは囃
子物に乗って行こうと言い、冠者に「雨も風も吹かぬに、出デざ釜打ち割ろう(顔ヲ出
サナイト殻ヲ打チ割ルゾ)」と囃させ、「でんでんむしむしでんでんむしむし」と音頭
を執って楽しむ。迎えに来た主人はこの様子に呆れ、冠者に「あれは山伏で売僧マイス(イ
ンチキ坊主)だ」と注意するが、冠者は山伏に誘われるとまた囃し出す。
 留トメは、大蔵流だと、主人も囃子物の調子に釣り込まれ、冠者と二人で囃し出す。山
伏は前と同様に謡いながら舞台を廻り、結局、山伏・太郎冠者・主人の順に橋掛を囃子物
に乗って退場。これに対し和泉流は、山伏は囃子物を中断して印を結んで姿を消し、狼
狽ウロタえて探し求める二人を打ち倒して逃げ入るにを、主人と太郎冠者が追い込む。
 
 山伏狂言。蝸牛を舞わせると云う発想は古く『梁塵秘抄リョウジンヒショウ』その他の口承文
芸にあったが、山伏をそれと取り違えると云うのは、狂言ならではの意表を突いた、明
るい滑稽味を醸カモす。
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