020050柿右衛門
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈柿右衛門カキエモン〉
「柿」
 カキノキ科の落葉高木。高さ約10mに達する。葉は革質。6月頃黄色4弁の雌花と雄花を
着ける。雌雄同株。果実は黄赤色、大形の液果で、甘柿と渋柿があり、生食用、また乾
柿とする。材は器具用・建築用。また若い果実から渋を採る。東アジア温帯固有の果樹
で、長江流域に野生、わが国に輸入されて古くから栽培。
 また「柿色」の略。
 
「柿右衛門」
 有田焼の色絵(赤絵)磁器の一種で、古伊万里・色鍋島と共に有田焼を代表するもので
ある。有田南川原の初代酒井田柿右衛門(1596〜1666)の創始で、その様式には特色が
あるので、その名に因んでこの手を柿右衛門と呼んでいる。この様式は、以後柿右衛門
窯の代々によって継承され、各代の作品も通じて柿右衛門と総称されている。
 初代柿右衛門は、中国人の周辰官から伝授された色絵の技法を素に苦心研究の末、遂
に寛永末年(或いは正保初め)初めて念願の色絵に成功したが、これは実にわが国にお
ける色絵磁器の起こりをなすものである。柿右衛門の技法は有田一帯に広まり、寛文十
二年(1673)には藩令で赤絵業者十一軒が決められ、有田に赤絵町が生まれる程になっ
た。古伊万里錦手や色鍋島も、全て柿右衛門創始の色絵の流れを汲んで生まれたもので
ある。
 
 柿右衛門手の特色としてまず挙げられるのは、乳白色の失透釉の掛かった素地である。
これはその色が米の研ぎ汁(有田地方でニゴシと云う)に似ているので俗に濁し手と呼
ばれるが、色絵の効果を十分に挙げるために柿右衛門の工夫したものである。絵付の筆
致は繊細で画風も温雅であり、余白が多くて瀟洒な感じがある。柿右衛門手には染付に
絵付したものもあり、これは染錦と云われている。なお六代柿右衛門の後見をした叔父
酒井田渋右衛門の作は、伊万里錦手風の意匠で異色があり、「元禄八乙亥柿」「元禄十
二年柿」などの銘がある。
 柿右衛門はヨーロッパにも盛んに輸出され、かた彼地の陶器にも大きな影響を与え、
イギリスのウースター窯、フランスのシャンティエ窯、オランダのデルフト窯、ドイツ
のマイセン窯などでは、柿右衛門写しが流行した。
 
関連リンク 「焼窯いろいろ(有田焼・伊万里焼)」
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