010720漆絵
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈漆絵ウルシエ〉
「漆」
 @ウルシ科の落葉高木。中央アジア高原原産。高さ3m以上。樹皮は灰白色。葉は3〜9
対の小葉を持つ奇数羽状複葉。被カブれやすい。6月頃、葉腋に黄緑色の小花を多数総状
に開く。雌雄異株。果実は歪んだ扁平の核果で、10月頃成熟して黄褐色となる。果を乾
かした後搾って蝋を採り、樹皮を傷つけて生漆キウルシを採る。中国・朝鮮・日本で古くから
広く栽培され、四木三草の一。
 A上記@からから採った生漆。また、これに着色剤・油・乾燥剤を加えて製した塗料(
製漆)。生漆は乳白色の粘稠液で、空気中では褐色に変化する。その主成分はウルシオ
ール・ゴム質・ラッカーゼ(ウルシオールの酸化酵素)である。製漆は彩漆イロウルシ・梨子地
ナシジ・蒔絵用などになる。
 
「漆絵」
 漆に絵具を混ぜた、色漆で描いた絵のことで、主に工芸品の装飾に用いられている。
日本画は膠ニカワに顔料を溶かして絵を描くが、漆絵の場合、漆の特殊な性質上、どんな顔
料でも自由な色が出せると云う訳にはいかず、発色に限度があって、古くから朱・黄・緑
・黒・茶褐色に限られていた。漆絵の遺品で、最も名高いのは、法隆寺の玉虫厨子
タマムシノズシ(飛鳥時代)及び朝鮮楽浪古墳彩篋塚出土の人物画像彩篋(漢時代)である。
玉虫厨子については密陀僧ミツダソウ(酸化鉛を乾燥剤として用いた油絵の一種)と云う説
が主に美術史家によって唱えられているが、近年漆芸家松田権六は、これを漆絵である
と主張している。漆絵はわが国にあっては、江戸時代に盆・食器・膳など日用品に盛んに
施され、漆工品の中で独特の美しさを発揮している。また初期浮世絵の墨摺スミズリ筆彩色
のもののうち、黒色部に膠を入れて漆のような光沢を出したものも漆絵と云う。
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