0107瓜盗人
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈瓜盗人ウリヌスビト〉
「瓜」
 ウリ類、特にマクワウリの果実。また、ウリ科の蔓性一年草、キュウリ・シロウリ・マ
クワウリ・スイカ・カボチャ・ヘチマ・トウガ・ユウガオなどの総称。
 
「瓜盗人」
 狂言の曲名。瓜畑の瓜が何者かに盗まれているので、畑主は案山子カカシを設シツラえて置
く。其処へ瓜盗人(シテ)が来て、瓜を盗む。盗人は、一度は案山子を人と見間違えて
仰天するが、作り物と分かって腹を立て、案山子を壊した上に畑を荒らして立ち去る。
翌日、畑主は今度は自身が案山子に扮して盗人を待ち伏せる。そうとは知らずに再びや
って来た盗人は、畑主の化けた案山子の仮面を見て、祭礼の余興に出る罪人(地獄の亡
者)の姿を連想する、そこで、案山子を罪人や鬼に見立て、鬼が亡者を地獄へ責め落と
す真似を演ずる。責め、責められしながら、一人面白がっているが、結局は、正体を現
した畑主の一喝を喰らって、驚いて逃げるのを、畑主が追い込む。
 
 雑狂言。大蔵・和泉両流共筋立てに大差はない。『花盗人』『盆山ボンサン』『連歌盗人
』『蜘クモ盗人』『子盗人』と並ぶ、盗人を主人公とする狂言の代表曲だが、狂言の盗人
通有の間抜けな善人振りと、本曲特有の長閑ノドカな田園情緒とが相俟って、人気曲であ
る。演技上の眼目は三点ある。まず案山子との応対。前半、作り物の案山子に平身低頭
し、後半、畑主の扮する案山子にビクともせぬ可笑しみは対比的だ。また、闇夜に瓜を
盗むと云うので、ころびと称して畑を転げ廻って瓜を探し当てる演技が楽しい。最後に、
責メの演技。囃子の演奏を伴い、杖によって舞われる。責メは鬼狂言に多く出て来る演
技だが、鬼狂言以外に劇的趣向として使われるのは、本曲と『鬮罪人クジザイニン』。全曲
通じてシテの独演的性格が強い。なお案山子は、脇座に据えた葛桶カズラオケの上に設え、
面はウソフキ。水衣を着せ、杖を持たせ、大蔵流は洞烏帽子ホラエボシ、和泉流は菅笠を被
せる。
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