0104鵜飼
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈鵜飼ウカイ〉
「鵜」
 ペリカン目ウ科の水鳥の総称。頸は細長く全身黒色。海岸・湖沼付近に群棲し、巧みに
潜水して魚を捕食する。世界各地に約30種が分布し、わが国にはウミウ・カワウ・ヒメウ
などなどが生息し、鵜飼に用いるのはウミウである。
 
「鵜飼」
 能の曲名。五番目物(切能物)。榎並左衛門エナミノサエモン五郎の原作と伝える古い能を、
世阿弥が改作した作品。密漁によって捕らえられ、殺された鵜匠の実説、及び言い伝え
に基づくものと考えられる。
 安房清澄アワキヨスミの僧(ワキ)が従僧(ワキツレ)と二人、甲斐カイの石和イサワへ着く。里
人(アイ)に宿を訊くが、此処では他国の人は泊めないと云う。無人の御堂へ入って休
むうち、腰蓑を着けた老人(前シテ)が松明タイマツを振りながら近付いて来る。老人は鵜
匠であると云い、その昔、殺生禁断の川で鵜を使って殺された男の話をする。そして松
明を振り立て、鵜を使って魚を追う様を演じ(鵜之段)、闇の中に帰って行く(中入)。
僧が男を弔ううち、閻魔大王(後シテ)が現れて法華経の功徳を説く。殺生の罪で地獄
に堕ちた鵜匠が法華経の力で救われることを主題とし、鵜を使う情景をも見せる能。
 
 前場に重点が置かれ、特に鵜之段はリズミカルな謡に逢わせて鵜を追う演技で、一曲
の見所となっている。後半は、鵜舟の篝火カガリビも消え、闇の夜に一人帰って行く老鵜
匠の淋しさを、見事に描いている。アイを登場させず、従って中入の後の間語アイガタリが
なく、後シテが早装束ハヤショウゾクで出る小書コガキ演出「真如シンニョ之月」「無間ムケン」その他
がある。その場合、鵜之段は橋掛を使う。ワキの旅僧を清澄の僧として、暗に日蓮上人
を仄めかしていると見ることも出来る。殺生の罪を扱った能は、他に『阿漕アコギ』『善
知鳥ウトウ』がある。
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