75 身近に生えて気になる植物〈ヨモギ〉
 
〈ヨモギ〉
 ヨモギ艾(モチグサとも)はキク科の多年草で、本州から九州、朝鮮など至る処の山
野に普通に生える。若い苗は白色の毛が多いが、生長するにつれて毛は少なくなり、高
さ50〜100p位になる。白色の毛は葉の下面だけになる。葉は互生し、羽状に深く切れ、
8〜10月に多数の小頭花が複総状花序に着く。頭花は鐘状で、長さ3o位、下向きに下が
る。春の新芽は特有の香りがあり、草餅に使われる。
 
 ヨモギの仲間はわが国に種類が多く、30種近くあるが、種類の見分けが難しい。海岸
にはシロヨモギ、カワラヨモギ、ハマヨモギなどがあり、山地にはオオヨモギ、ヒトツ
バヨモギなど、高山にはミヤマオトコヨモギ、サマニヨモギ、タカネヨモギ、アサギリ
ソウなどが生える。
 他の種類は低地から山麓の陽地に生えるものが多く、最も普通に見られるものはカワ
ラニンジン、クソニンジン、オトコヨモギ、イヌヨモギ、ヒメヨモギなどである。
 
 有用種としてはヨモギの他に、若苗を茹でて食べるオトコヨモギ、漢方薬に用いるカ
ワラヨモギなどがある。ヨモギの一種であるセメンシナはトルキスタン地方の原産で、
若い頭花から回虫の特効薬サントニンを採る。
 
〈薬用〉
 ヨモギの葉を艾葉ガイヨウと称し、漢方では止血、強壮剤として子宮出血、痔出血などに
用い、民間では生の葉を切り傷、打ち身、腹痛に外用したり内服する。灸キュウに用いる熟
艾モグサは、葉を乾燥して臼でよく搗くと、葉肉や葉脈は細粉になり、葉裏の長い丁字毛
はもつれて綿状の塊になるので、篩いフルイにかけて毛だけを分取したものである。主産地
は新潟県である。オオヨモギの葉も同様に用いる。
 
〈染色〉
 ヨモギの茎葉は、染料として用いられる。直接染めで萌黄色モエギイロ、明礬ミョウバン媒染
で黄褐色キカツイロ、鉄漿カネで濃緑色に染める。
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