20 身近に生えて気になる植物〈タンポポ〉
 
〈タンポポ〉
 タンポポ蒲公英はキク科の多年草で、日当たりの良い原野や丘陵に生える。根は牛蒡
ゴボウ根で、地上に多数の葉をロゼット(根生葉)状に出す。葉は長い箆ヘラ状で、縁は深
く浅く欠刻するが、その変異は極めて多様である。3〜4月に葉の間から中空の花茎を出
し、その先に1個の頭花が着く。頭花は黄色の舌状花からなり、日を受けて開く。総包
片は多数ある。痩果ソウカは褐色で楕円形、上部に突起がある。花後に痩果の頂から小さい
柄が出て、その上に白色の冠毛が傘のように開く。それが俗に綿毛と云われるもので、
風に乗って遠くまで運ばれ、繁殖する。北半球に多くの種類が分布し、わが国には20種
内外が自生する。種類の区別は、総包片の性質と形とに重きを置いている。
 
 タンポポ(カントウタンポポ)は関東地方に多く、カンサイタンポポは近畿地方から
四国、九州に普通に生える。エゾタンポポは本州中部地方以北から北海道に見られる。
 舌状花の白色のものをシロバナタンポポと云い、関東地方から四国、九州にかれて分
布する。
 以上のほか極めて限られた地方にだけ生育している種類があり、高山だけに見られる
ものもある。
 なお、都会地付近などに普通に見られるものは、帰化植物のセイヨウタンポポである。
セイヨウタンポポは、総包片の外片が強く反曲するので、すぐ見分けが付く。
 
〈蔬菜ソサイ〉
 セイヨウタンポポの根出葉を蔬菜として用い、特にフランスでは品種も改良され、栽
培が盛んである。十分に肥培し、夏から秋にかけて葉を縛り上げ、内葉を軟白して収穫
する。また、やや結球性で内葉が自然に軟白される品種もある。甘味と香気に富み、一
種の苦味があり、サラダに用いるが、わが国では栽培は極めて少ない。
 
〈薬用〉
 漢方ではわが国、朝鮮、中国に産する多種類のタンポポ類の根を蒲公英ホコウエイと称し、
発汗、解熱、健胃、利尿、強壮、催乳剤として用いる。葉も根と同じ作用があり、葉を
食べて浮腫フシュや腫物を治すことも出来る。乳腺炎や腫物には摺り潰して患部に貼り付け
ても良い。
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