12 身近に生えて気になる植物〈ススキ〉
 
〈ススキ〉
 ススキ薄・芒はイネ科の大形多年草で、わが国を始め、東アジア地方の山野に多く見ら
れ、「秋の七草」の一つである。葉は短い根茎に多数束生して株を作り、平らで堅く、
長さ1m以上、幅2pに達し、縁はざらつき、先端は長く尖り、中肋チュウロクは下半が太い。
夏から秋に葉心から高さ1〜2mの花茎を立てて少数の葉を付け、先端に20〜30pの花序を
単生する。花序は、短い中軸上に細長い枝が多数付く。小穂は2個ずつ花序の枝の節に
着生し、長さ5〜7o位の披針形で尖った包穎ホウエイが2個あり、その間から芒ノギが突出す
る。小穂の基部には白色又は帯紫色で小穂よりも長い毛束が付き、成熟すると風に乗っ
て飛散する。
 
 ススキの葉の幅などにいろいろな変化があり、葉幅の狭い園芸品種をイトススキ、横
斑のあるものをタカノハススキ、縦斑のあるものをシマススキと云う。
 ハチジョウススキは伊豆八丈島などで牧草として作られている一種で、わが国の暖地、
特に海岸地方に分布する。葉は幅広く、縁はあまりざらつかず、下面は粉白色を呈する
ことが多い。葉舌には毛がなく、花序は密に枝を付け、小穂は密生する。
 トキワススキは、太平洋諸島からわが国の関東地方南部までの暖地の海岸地方に分布
する一種で、花序の中軸は長く、殆どその先端に達し、花期は7月でススキより早い。
 
〈語源〉
 ススキはスギと同じく、すくすくと立った木や草の意味であると云う説と、古代の神
楽でササ、アシ、ススキなどをさやさやと鳴らしたススケ(イネなどに似た草)が語源
であると云う説などがある。芒は漢名で、薄は国字である。花穂をハナススキ(花薄)、
ハタススキ(幡薄)、オバナ(尾花)と呼ぶ。カヤ(萱、茅)とも呼ぶが、これはカ(
上)、ヤ(屋)の意味で『古事記』に「屋根を葺く草をカヤと云う」とあるように、初
めは屋根を葺く草の総称であったが、ススキだけを指すようになったと見られている。
 
〈民俗〉
 8月、9月の月見にススキを飾る風習は全国的に見られるが、その他、衣服の柄、垣
根、生け花としての季節表現や神仏への供え花など生活に多様に採り入れられている。
 15世紀中期には宮廷でも「尾花粥オバナガユ」「すすき粥」と云い、旧暦8月1日(八朔
ハッサク)にススキの穂を黒焼きにして粥に混ぜて食べ、良薬とした記録があり、民間では
近代まで伝えられていた。
 長野県諏訪スワ大社の御射山ミサヤマ祭では、古くから八ヶ岳山麓の野に穂屋と云うススキ
の仮屋を造り、神主が篭もって祭りをし、ススキの穂を持ち帰って本社の神に供えてい
る。八月十五夜の月見にススキを供えると同じく、青いイネの生育を祈る信仰であろう。
 岩手県では5月5日に餅を搗いてススキの葉に包み、それをススキモチと呼ぶのは、
田の神への供え物と考えられる。
 その他沖縄ではゲエンとかサンと呼んで、ススキを神聖な場所に立てる信仰が広く行
われている。
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