04 身近に生えて気になる植物〈カンゾウ〉
 
〈カンゾウ〉
 カンゾウ萱草はユリ科ワスレグサ属の植物の総称で、日当たりの良い草地などに生え
る大きな多年草である。ユーラシア大陸に約30種があり、特に東アジアの温帯に多い。
 葉は線形で根生し、2列に付く。花茎は高く伸び出し、先に数個の花を総状乃至束状
に着ける。花は、黄色系統又は橙赤色系統、花被片の下部が癒合ユゴウして漏斗ロウト状とな
る。花冠の裂片は6個、雄蘂も6個、子房は上位で3室、朔(草冠+朔)果サクカを作る。
 
 中国産のホンカンゾウが萱草と呼ばれ、この花を見て愁いを忘れると云う故事に因ん
でカンゾウと名付けられた。ホンカンゾウは、古くヨーロッパに移出され、400年も前か
ら栽培されていると云う。この類の種間雑種は容易く出来るので、人工雑種が多く作ら
れ、園芸品として重用されている。しかし自然界では、分布域が重なっていても、開花
期、開花時間、生育地の違いによって隔離されており、自然雑種が出来ることは少ない。
 若芽や若い花序は、食用にもなる。
 
 ワスレグサ属植物は、開花時期について、早朝に開花しその日の夕方に閉花する昼咲
きの群、夕刻開花し翌朝閉花する夜咲きの群、夕刻開花して翌日の午後まで開花し続け
る夜昼咲きの群の3群がある。昼咲きのものは花の色が橙赤色系であって、概して芳香
がなく、夜咲き及び夜昼咲きの群は花の色は黄色系で強い芳香がある。
 
 わが国の野生種にはユウスゲ、ニッコウキスゲ、ヤブカンゾウ、ノカンゾウなど約10
種類がある。
 ユウスゲはキスゲとも云い、花は黄色で夜咲き、7〜8月に咲く。丘陵地の斜面などの
やや乾燥した処に咲く。
 ニッコウキスゲは、花は橙黄色で昼咲き、7月に咲き、高原や高山に群生する。
 ヤブカンゾウとノカンゾウは、花は橙赤色で昼咲き、7〜8月に咲く。ヤブカンゾウは
重弁花を持ち3倍体、ノカンゾウは重弁ではなく2倍体である。共にやや湿った草地に
生える。
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