14 ラン科植物の殖え方
参考:岩手日報社発行「岩手の野生ラン」
△種子による繁殖
ラン科植物の種子は、究めて小さく(0.1〜0.5mm)、全体が胚(根、茎、葉の根源に
なる物質)で、発芽のときに胚の養分となる胚乳を持っていない。
従って、発芽するためには、種子の外から養分を吸収しなければならない。その方法
として執られたのが原初根茎(プロトコルム)の形成である。
△原初根茎(プロトコルム)
地上に落ちた種子は、水分を吸収して膨らみ、特殊な誘引物質を放出して、菌を引き
寄せて種子内に入れる。菌は、増殖して菌糸を作り、更に菌糸は種子外にまで伸び、周
辺の腐植などから有機物質を吸収する。
これらの物質は、蓄えられ、原初根茎は次第に肥大する。ある大きさになると、一部
分から芽(子葉)を出してくる。
このようにランの発芽には、原初根茎と云う手間のかかる段階があり、しかも形成の
主体が菌であることから、菌の有無が全てを左右する。これはランの決定的な特徴(弱
点)である。
生物工学の発達によって、共生する菌がいなくても発芽することは実証されているが、
大部分のランは、生物工学の恩恵を受けることは出来ない。
ランの発芽に関与する菌が、生き続けられる環境を保全することは、自然界にあるラ
ン科植物の保護に直接繋がるのである。
ランの幼株には大抵原初根茎がくっ付いている。それは、孵化したばかりの幼魚が、
腹を丸く膨らませている姿と同じである。
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