13 ラン科植物の根
 
                   参考:岩手日報社発行「岩手の野生ラン」
 
 一般に高等植物の根は、茎や葉と共に重要な器官であり、普通は地中にあって、植物
体をしっかり支え、水と、これに溶けた養分を吸収して茎や葉に送り、また養分を貯蔵
する働きもする。
 ラン科植物の根は、菌と共生しており、菌は外部の栄養物質を吸収したり、その物質
を根の内部で、ランの栄養分に作り変える働きをしている。従って、根毛を必要としな
いランが多く見られる。
 ただし、コアツモリソウのように、小型のランやミヤマウズラなどの地生ランには、
根毛を使っている種類もある。
 
 一般にラン科植物の根は、紐状で体の割には太くて長い。例えば、シュンランの根の
横断面は、中心に細くて丈夫な芯があり、芯の周りを水分を含んだ組織が囲み、外側は
コルク状の皮になっている。
 これらの組織や皮の中に菌が入り込んで、ランの栄養分を作っているようである。一
方、菌がランから供給される物質は、マメ類と根粒菌のように明らかではない。
 つまり、紐状の根は、その中で共生する菌が、ランの必要とする栄養分を作ったり、
貯めたりする場所になっている。
 菌の働きが活発で、菌根から茎や花に送る養分が増え、葉が光合成をしなくても間に
合うようになると、サカネランのような、いわゆる腐生ランになってしまう。
 逆に、菌との共生が順調に行われない場合は、養分吸収を根毛に頼らざるを得ない。
これは、究めて小型で根が細いランなどにみられる。いずれも急激に適応の変化をする
訳ではない。
 
 アリドオシランは、正式な根を持っていない。究めて細い茎が地表を這い、節に小さ
な芽を付け、その芽に菌糸が絡み付いている。
 この菌糸が、根の働きを代行している、と云われている。このように、ラン科植物は
菌類と深い関わりを持っているので、菌類を無視することは出来ない。
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