12 共生と菌根
 
                   参考:岩手日報社発行「岩手の野生ラン」
 
 全てのラン科植物が生活するためには、菌との共生が不可欠の条件となるので、改め
て共生と菌根の意味を考えてみたい。
 共生の代表例は、マメ科植物と根粒菌との関係で、根粒菌は宿主から無窒素化合物、
塩類及び水をもらい、空気中の窒素を固定して窒素化合物を宿主に与えて共生生活を営
む。
 このように、種類の違った二つの生物が共に生活し、害を及ぼさず、又は一方が利益
を得る生活様式を共生と云う。
 
 菌根は、植物の根に菌類が共生する現象である。菌糸が根の内部に入り、細胞内部に
繁殖するものを内生菌根と云い、ラン科、ツツジ科などに多くみられる。
 
 光合成をしないランは、発達した菌根から栄養を得ており、菌根は菌糸が外部の腐植
物質から取り込んだ栄養分を利用して生長する。
 つまり、栄養物質の流れは、腐植物質→菌糸→菌根の順になり、このように腐植物質
の栄養を、菌糸を仲介にして取得するランを、一般に腐生ランと云っている。
 例えば、オニノヤガラが2〜3本生えている所を掘ると、地中に花茎を出さない若い
ジャガイモ状の塊が出てくる。この塊は、一部に小さな芽を作り、2〜3年後に花茎を
出す。
 塊の表面には、ナラタケ菌などの菌糸が絡み付いている。この菌糸は、腐植物質の栄
養を吸収して菌根内部に送り、それを内部の菌が、オニノヤガラの養分に変えて蓄積し、
次第に肥大して、翌年の開花に備えていることを示している。
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