11 ラン科植物の生態
 
                   参考:岩手日報社発行「岩手の野生ラン」
 
 ランの生活の仕方を大別すると、二つの型がある。
 1 葉緑素を持ち、光合成によって栄養を取得する型
 2 葉緑素を持たず、他から栄養を吸収して生活する型
 大部分のランは1に属しているが、生活する場所によって地生ランと着生ランに分け
られる。
 2の葉緑素を持たないランも、地生ランに入るが、特に腐生ランと呼び、他のランと
区別する。
 つまり、地生ラン、着生ラン、腐生ランの3種の用語が一般的に使用されている。
 
 △地生ラン
 地生ランは、地中の根で体を支え、根は菌類と共生して養分を作り、葉で光合成を行
い、植物を生長させている。
 当然、日光を必要とするので、その環境に合わせた体形にして、効率的に光を受けて
いる。
 例えば、サギソウやミズトンボは、イネ科植物の多い湿地の草原に生えるランであり、
葉形も周りの植物に似ている。林床に生えるランは、可能な限り葉を広げて、光の受容
量を多くするなど、それぞれ環境に合わせている。
 
 △着生ラン
 着生ランは、ヒロハツリシュスラン、セッコク、ベニカヤランなどである。
 どれも高木や岩壁にへばり付いて生活している。ツリシュスランの根は太く、周りに
腐植質のものがあり、それが養分の源となっているようである。
 セッコクとベニカヤランの根は、ひも状で乾燥気味、着生主に合わせて曲がりくねり、
確実にへばり付くことができるようにしている。
 
 △腐生ラン
 腐生ランは、オニノヤガラ、アオテンマ(オニノヤガラの品種)、アオキラン、ショ
ウキラン、ツチアケビ、キミノツチアケビ(ツチアケビの品種)、ムヨウラン、サカネ
ラン、ヒメノヤガラである。
 オニノヤガラは、地中にジャガイモ状の塊茎を作り、先端から花茎を伸ばす、菌根生
のランである。共生菌はナラタケ菌である。
 アオキランは、倒卵形の多肉な地下茎を作り、先端から花茎を伸ばす、菌根生の腐生
ランである。
 ショウキランは、肉質円柱状の地下茎を作り、菌根生の枝を疎らに出す。
 ツチアケビは、肉質紐状の地下茎を水平に伸ばし、その一端が直立し、その先端に花
茎を付ける、菌根生の腐生ランである。
 ムヨウランは、太くて固い地下茎を作り、その一端から花茎を出す、腐生ランである。
 サカネランは、斜め上向きの根を密生する腐生ランで、共生菌を持っている。
 ヒメノヤガラは、地下に多数分岐した菌根を作り、その一端が伸びて花茎となる。
 ユウシュンランは、腐生ランではないが、葉が小さく数もない。これらの葉が光合成
をしても、ユウシュンランの体を作るに必要な量に達しない。不足分は腐生ラン的生活
で補っていると考えられている。
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