68 育ててみたい植物〈センブリ〉
 
〈センブリ〉
 センブリ千振はリンドウ科の二年草で、わが国の日当たりの良い山地に生える。根は
黄色で、茎は高さ20〜30p、四角で紫褐色を帯びる。葉は対生し、線形で先が尖る。9〜
10月に茎の上部に花を着ける。花冠は深く5裂し、裂片は披針形で白色、紫色の脈があ
る。基部に2個の腺溝センコウがあり、その縁に長い毛があるが表面は滑らかである。昔か
ら健胃剤として有名で、千回煎じて振り出しても苦いので「千振」の名がある。
 
 近似種のムラサキセンブリは花が紫色で、花柄の上部や萼片の縁に隆起があり、腺溝
の毛の表面に乳頭突起があるので区別され、矢張り苦味が強く、薬用になる。
 イヌセンブリはセンブリに似ているが、葉は幅が広く、先が鈍形で、萼片も幅が広く、
基部が細まり、苦味が殆どないもので、薬用にはならない。
 チシマセンブリは萼や花冠4裂し、花冠裂片の腺溝は1個あり、北海道や千島以北に
分布する。
 
〈薬用〉
 わが国の民間薬として最も有名で、当薬トウヤクとも云う。全草に苦味配糖体のスウェネ
チアマリン、苦味質、アルカロイドを含有するので非常に苦く、粉末やチンキの形で苦
味健胃剤として用いる。昔は熱湯の中に暫く浸し(これを振り出すと云う)、その湯を
服用した。インドではチレッタを、ヨーロッパではケンタウリウムを、センブリと全く
同じように使用している。
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