52 育ててみたい植物〈エビネ〉
〈エビネ〉
エビネ海老根・蝦根はラン科の多年草で、林内の日陰に生える。根茎は太く節があって
横に伏し、和名はその形をエビに喩えて付けられた。葉は少数個付き、長楕円形で縦の
襞ヒダがあり、花茎と共に春に出る。花茎は葉心から出て直立し、高さ30〜50p。花穂は
長さ10p内外で、やや疎らに十数花を着ける。花は径2〜3p、萼片と花弁は淡緑色又は
紫褐色を帯び、唇弁は白色で3裂し、基部に距がある。わが国全土に生え、ときに庭園
に植えられる。
キエビネはエビネの一種で、四国、九州、紀州南部に自生し、花が黄色で少し大きく
て美しい。
タカネ(オオエビネとも)は九州、四国に自生し、前2品の中間型で、雑種と考えら
れている。
キリシマエビネは、花が白色で屡々淡紅色を帯びて半開し、本州近畿地方以西、四国、
九州に生え、エビネよりも上品なので山草収集家に好まれる。
ニオイエビネ(オオキリシマエビネとも)、花が一層大きく、香りがあり、伊豆七島
に分布する。
ナツエビネは日本などに産し、少し遅く咲き、花被片はよく開出し、唇弁に距がない。
ツルランは、九州南部、沖縄、台湾などの暖地に分布する常緑の多年草で、温室植物
である。
ヒゴエビネ(キバナキリシマエビネとも)は、四国(高知・愛媛)、九州南部に産する
多年草である。
ヒゼンエビネは九州南部、四国、紀伊半島、八丈島の標高0〜800mに産する多年草であ
る。
コオズエビネは、伊豆諸島の標高0〜500mに産する多年草である。
オナガエビネは、わが国の南西諸島原産の多年草地生ランである。
リュウキュウエビネは沖縄、南西諸島、台湾に自生する多年草である。
ヒマラヤニオイエビネはネパール、シッキム、ブータンの高地に自生する多年草であ
る。
イシヅチエビネ(イシヅチランとも)は愛媛県石槌山系で発見され、わが国全土に見
られる多年草である。
キソエビネ(コランとも)は、わが国の標高1500m付近に原産する多年草である。
トクノシマエビネ(オキナワエビネとも)は徳之島、沖縄の0〜500mに自生する多年草
である。
ベスティタ・ルブロオクラータは、ビルマ原産の多年草である。
ウィリアム・マレイはタイ、ビルマ原産のベスティタの交配種である。
〈サルメンエビネ〉
サルメンエビネ猿面蝦根(エゾエビネとも)はラン科の地上性多年草で、山中の林内
(標高300〜1300m)に生える。葉は短い根茎上に2〜4個束生し、幅狭い倒卵長楕円形で、
長さ25p内外、幅8p内外に達し、基部は細く柄状となる。花茎は晩春に出て、花と共に
開出する短毛があり、高さ30〜50p、上方に疎らに数花又は十数花を着ける。萼片は長
さ2.5p内外、緑色で紫褐色を帯び、開出する。花弁は幅狭い。唇弁は3裂し、中裂片は
大きく楕円形で紫褐色を帯び、縁に皺と波状の鋸歯があり、内面に凹凸のある3条の著
しい隆起線が平行し、距は無い。名は唇弁の感じをサルの顔に喩えて付けられた。