0102b園芸蘭科植物
[サ]
ジゴペタルム属
殆どが南アメリカ,少数が中央アメリカに分布し,約40種が知られ,着生ときに地生
です。
偽鱗茎の頂に2〜数葉が付きます。葉は縦皺型で,基部に柄が発達します。
花序は偽鱗茎の基部から立ち上がり,1〜数花付き,花は一般に美しく大きく,唇弁
は近縁の種に比べますと,側裂片が目立たず,中裂片が特に大きくて前方に広がって
波打ち,距は小さい。蘂柱は短く,小嘴体ショウシタイは尖ります。花粉塊は4個で粘着体
上に直接付いています。
シプリペディウム(キプリペディウム)属(アツモリソウ属) 例 クマガイソウ
北半球の温帯(1種だけはメキシコとグアテマラ)に約25種分布します。
冬は地上部が枯れる多年草で,高さは大体1m未満,葉は薄く,縦脈に沿って襞ヒダが
あります。完全雄蘂が2個ありますが,庇状に変化した仮雄蘂もあります。雄蘂と雌
蘂が癒合して蘂柱を形成し,花被片が大きく,色彩も豊かです。子房は1室で常に180
度捻れます。花は唇弁が大きく膨らみ観賞価値が高い。
かつて園芸界ではパフィオペディルムを含むアツモリソウ亜科の全属を,シプリペデ
ィウム又はシップと呼んでいました。
シンビディウム(キンビディウム)属(シュンラン属) 例 カンラン・ナギラン
北海道南部以南,インドからオーストラリアにかけて約50種が分布し,地生種(葉が
鱗片状に退化した腐生種もある)も着生種もあります。
普通葉のある種類は,細長くて硬い偽鱗茎を作るものもあります。
花茎は直立又は垂下し,1〜多数花を付け,花は肉質で唇弁は3裂,普通肉質の隆起
条が2本あります。蘂柱は長く,弓形に曲がり,脚部が発達して唇弁と繋がります。
花粉塊は硬く2個,縦の窪みがあります。
スタンホーペア属
熱帯アメリカに約25種分布し,熱帯林の樹幹などに着生します。ゴンゴラ属を想わせ
る植物体にグロテスクな花が咲きます。
偽鱗茎は頂に1葉があり,葉は縦縞型,表面側が窪んだ葉柄ヨウヘイがあります。
花茎は偽鱗茎の腋から出て短く,唇弁は基部は多少袋状ですが,中部と前部は形に差
があり,くねりはするものの筒状と兜状にはならず,基本的には平たい。
属内の分類には唇弁と蘂柱の形が役立ちます。花粉塊は2個,粘着体はやや大きく,
心形です。
本属の幼苗によく似たジーベキンギア属に近縁かも知れません。
スパトグロッティス属(コウトウシラン属)
八重山諸島以南の熱帯アジアとオセアニアに約40種分布する地生ランです。
偽鱗茎はやや扁平な球形で,枯れた莢に包まれます。葉は1〜2枚,縦皺があり,休
眠期に枯れ落ちます。
花序は偽鱗茎の腋から出て直立,上部に多くの花が咲きます。花は一般に美しく,小
花柄が明瞭です。
ブレティア属に近いが,3裂する唇弁の側裂片が狭小又は欠け,T字状の中裂片は基
部が細い。更にその基部に横に張る1対の歯状の爪があり,その上に1対の黄色で球
状の肉質突起があります。
常緑種と落葉種があります。
スピランテス属(ネジバナ属) 例 ネジバナ
温帯地方に約30種分布し,特にメキシコ及びアメリカ合衆国に多い。
地生ランで,細くて紡錘形の塊根が数個あります。茎は直立し,冬には枯れます。
花序は細長く,花は小さく,螺旋状に蜜に付き,屡々芳香があります。萼片と側花弁
は前方に向かい,先が少し反って巻き,ほぼ同形です。唇弁は分裂せず,前方の縁は
屡々縮れており,距はありません。花粉塊は2個で柔らかく,小塊型,小嘴体ショウシタイ
は細く2裂し,その間に1個の粘着体があります。
セロジネ(コエロギネ)属
中国南部以南の熱帯アジア及び太平洋諸島に100種以上が分布します。
常緑で,偽鱗茎が連なり,頂に1又は2葉があります。葉は折畳型ですが,質はやや
硬い。
花は一般に美しく,花粉塊は2個ずつが2組になって共通の柄上にあります。この属
とその近縁属の偽鱗茎は中間に節がなく,やや膜質の目立つ苞葉ホウヨウがあります。本
属は花が大きく,側萼片の基部はメンタム(凹み)を形成し,苞葉は花時に脱落しま
す。
近縁でよく栽培されるフォリドタ属は花が小さく,苞葉が脱落しないものもあります。
デンドロキルム属は花が小さく多花性で,側萼片はメンタムを作らず,苞葉は花後も
残ります。
ソブラリア属
メキシコ以南の熱帯アメリカに35〜50種分布し,多くは地生ですが,ときに樹木に着
生します。
茎は束生し,硬くて葦状,分岐しません。葉は縦皺のある笹状で常緑性です。
花は頂生,屡々分岐し,大型の花が次々と咲き,一日で凋みます。外形はアルンディ
ナ(チクセツラン)属に似るが,蘂柱の両側に稜リョウがあり,先端が3裂,側裂片が多
少突き出ます。また8個の花粉塊は軟らかい。
ソフロニティス属
ブラジル東部とパラグアイに8種知られ,樹上や岩上に着生します。
根茎が這い,その上に1葉を頂生する偽鱗茎が集まります。
小型のレリア属のように見えますが,花茎上の花は常に1〜2個です。唇弁は真っ直
ぐで,下に反らず,基部は無柄で蘂柱の基部と僅かに癒合するか,基部から離れて出
ます。また蘂柱は適度に太く,やや弁状の翼が柱頭の両側にあります。花粉塊は8個
でレリア属と同数です。
レリア属などエピデンドルム類の各属とよく交配され,園芸品種作出の親に用いられ
ます。花は長命です。
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