0102園芸蘭科植物(続き)
 
               園芸蘭科植物
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[タ]
ダクティロリザ属(ハクサンチドリ属)
 北半球の冷温帯に約30種分布し,湿った草地に生えます。
 地下に掌状の塊茎根があるのが,近似属との簡単な区別点です。地上部は冬枯れます。
 葉は細長く,茎の上部に行くにつれて小さくなって,苞葉ホウヨウと連続しますが,オル
 キス属と違って花茎を包みません。
 花は小さいが色彩に富み,赤紫色が多く,白色,黄色などがあります。オルキス属と
 は掌状の地下器官によっても区別できますが,苞葉が少なくとも下位のものは葉状で,
 膜質にならない点も異なります。
 ギムナデニア(チドリソウ)属は唇弁の距が相対的に細長く,ポネロルキス属やアミ
 トスティグマ(ヒナラン)属などは地下部の形が違い,花が片方を向いて咲く傾向が
 あるので見分けやすい。
 
ツニア属
 中国南部,インド,東南アジアに約6種分布する地生ランです。
 茎は真っ直ぐ立ち上がり,多数が株元から集まって出ます。肉質で休眠期には葉が落
 ちても茎は裸でそのまま残るので,細長い偽鱗茎と云えます。葉は2列互生し,薄く,
 裏面は白っぽいです。
 花序は葉のある茎の先に出て,垂れ下がり,普通5〜8花が蜜に付きます。苞葉は大
 きく,ボート状で落果後も残ります。花は大型で美しいが短命,唇弁は分裂せず蘂柱
 を囲みます。
 カランテ属に似るが,棒状の茎に上部が普通葉,基部が莢状葉,花序は頂生,宿存性
 の苞葉があるので区別されます。
 
ディネマ属
 カリブ海地方,メキシコ,中央アメリカに1種知られる常緑の着生植物です。
 エンキクリア属の1亜属とする説もあります。他のエンキクリア類と比べて蘂柱先端
 両側の裂片がやや弁状に大きく,蘂柱全長の約半分を占めるのが特徴とされます。し
 かし花や果実或いは植物体の特徴はこの属だけという特徴のものはありません。エン
 キクリアを属として認めた上で,なおエピデンドルム属に所属させる書もありますが,
 エピデンドルムと比べますと蘂柱が唇弁と殆ど癒合していない(離れている)のと,
 偽鱗茎を形成するのが異なり,これらの特徴はエンキクリア属と共通します。
 
デンドロビウム属(セッコク属)
 岩手県以南のアジア,オセアニアに約1000種分布し,樹木や岩上に着生する常緑草本
 です。
 植物体は極めて多型で,偽鱗茎が発達するものやしないもの,葉の左右側が扁平にな
 るもの,花序が古い茎だけに現れ,かつ多数の小さい花をほぼ集中しているため球状
 に見えるものなどがあり,これらの特徴を重視して多数の属に細分する意見もありま
 す。
 広義のエピデンドルム類の中では,蘂柱脚部が発達し,硬い花粉塊は2個ずつが2組
 計4個の群に入り,ブルボフィルム属によく似ます。しかしブルボフィルム属は花茎
 が偽鱗茎の下か,離れた根茎から直接出ることと,唇弁が蘂柱脚部と繊細に繋がるの
 で動きやすい点などが異なります。
 
ドリタエノプシス属
 ファレノプシス属と近縁属ドリティス属との最初の交配種アサヒは,1923年岩崎男爵
 によって登録され,その後も420種が登録されています。また,ドリティス・プルケリ
 マとの交配により,濃紅色,肉厚で,ファレノプシス属の大きさと形を持つ花が生ま
 れています。
 
ドリティス属
 熱帯アジアに1種知られる着生植物です。
 ファレノプシス属によく似ており,屡々同属の1種とされますが,側萼片がメンタム
 (凹み)を作ること,唇弁の基部には対になった爪があり,蘂柱の両側に立つこと,
 蘂柱の脚部が長く,その中間に庇を作るような膨らみがあること,花粉塊がほぼ完全
 な4個に見えることなどで区別できます。
 よく似たキンギディウム属は唇弁の爪部ソウブがなく,蘂柱脚部の庇はなく,花粉塊は
 明らかに4個で,粘着体が小さい。
 
[ナ]
ネオフィネティア属(フウラン属)
 茨城・福井県以西,沖縄本島,大東島,朝鮮半島南部に分布し,常緑樹に着生します。
 茎は短いが単軸分枝型,葉は常緑で厚く肉質の2列生です。
 花序は葉腋から出,花は縦長に咲き,萼片と側花弁はほぼ同形,唇弁は反曲せず,鋭
 く3裂し,細かくて長く屈曲した距が垂れます。蘂柱は短く翼があり脚部はありませ
 ん。硬い花粉塊が2個,多少三角状の柄があります。
 近縁のアングラエクム属などと比べて唇弁が細く,短くて明瞭な翼,脚部が発達しな
 い蘂柱,深く裂けた葯床ヤクショウ,2裂した小嘴体ショウシタイ,細くなった花粉塊柄の上に裂
 け目のある花粉塊があるなどの点が他属と見分ける特徴です。
 
[ハ]
バニラ属
 台湾以南,世界の熱帯に約90種,その半分が熱帯アメリカに分布する蔓性植物です。
 ランの中で茎が長い蔓になるのは,本属の全種とガレオラ(ツチアケビ)属のうち熱
 帯性の殆どの種だけです。後者の殆どは緑葉がなく,鱗片化した腐生植物ですが,本
 属は普通厚い常緑葉が間隔をもって2列にほぼ平たく付きます。
 茎は肉質で各葉と対生して1本ずつ根を出します。気根のある熱帯ランには水分と養
 分を吸収する根皮があるが,本属にはありません。
 花序は腋生エキセイ又は偽頂生で短く,花は一般に大きいが,その日に凋みます。花粉塊
 は粉塊状です。果実は長い円柱状で肉質の莢になります。
 
パフィオペディルム属(トキワラン属/唇弁は袋状)
 インドからソロモン諸島にかけての森林内に約60種分布します。
 日本を含めた北半球の涼しい地方に分布し,冬に地上部が枯れるシプリペディワム属
 にも花の形が似ています。
 フラグミペディウム属には最も似ており,共に茎が短く,葉は常緑ですが,子房は1
 室です。
 これらの3属は,他の多くのランが1個しか完全雄蘂がないのに対し,2個あります。
 また蘂柱ズイチュウの先にある仮雄蘂カユウズイが,庇状に広がっているのも共通の特徴です。
 この仲間には茎が長く,屡々分岐し,葉に縦皺があり,花数が多いセレニペディウム
 属が熱帯アメリカに3種知られています。その1種チカは5mになり,茎が立つランと
 しては最も大型です。
 
バンダ属(ヒスイラン属)
 南西諸島南部(尖閣列島魚釣島)以南,インドからオーストラリア北部にかけて30〜
 40種分布し,樹木,ときに岩上に着生します。
 茎は単軸分枝型,比較的短いものから,よく伸びて這ったり,他物に寄り掛かるもの
 があります。葉は2列生で厚く,常緑性です。
 花序は葉腋から出,花は普通平開し,萼片が大きく,唇弁は3裂,側裂片は立ち,中
 央裂片は更に3裂するものがあります。普通小さな距があり,蘂柱は短い。花粉塊は
 2個か4個で広い柄と大きな粘着体があります。
 葉が棒状の1群はここでは別属(パピリオナンテ属)扱いとしました。
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