41 香辛料
 
                 香辛料
 
               参考:小学館発行「園芸植物大事典(用語・索引)」
 
 香辛料は芳香や刺激性のある植物の一部で,これを少量加えることによって食物の風
味をよくし,そのために利用される植物が香辛料植物です。香辛料は過去或いは現在薬
用に供されていますが,これを食物に加えるとその風味や刺激性によって食欲の増進,
消化器の調整などの効果があります。香辛料は日常の調理に用いられるだけでなく,加
工食品,特に動物性のものには欠かせないもので,食品に独特の風味を加え,防腐の効
果もあります。リキュール,薬酒などには様々な香辛料が用いられています。
 料理では香辛料のことを「ハーブとスパイス(herbs and spices)」と表現すること
があります。一般にハーブという場合には主にユーラシアの温暖地帯産の比較的穏やか
な風味のものを指し,スパイスは熱帯産の刺激・芳香性に富んだものを指しています。
クローブ,ナツメグ,メースの原生地であるモルッカ諸島はかつては「スパイス・アイ
ランド」と呼ばれました。
 本来ハーブという言葉は草本,薬草,香草を表す言葉ですが,木本を含む薬味,香味
野菜を指すこともあります。料理においては香辛料とするとき,茎葉をハーブ,種子・
乾果をシーズ(seeds)といっています。園芸では両者をハーブとして扱い,これの花壇
がハーブ園(herb garden),これを扱う園芸がハーブ園芸(herb gardening)で,香辛
料植物のほかに薬草・香料植物を扱っています。
 
[形状]
 香辛料には生品と乾燥品があります。ショウガ,ニンニク,パセリ,ライム,スダチ
などは青果店で入手することができます。乾燥品はスパイス棚に置かれ,原形のままか,
粗挽き,粉末のものがあり,精油とされているものもあります。これらは単品のほかに
用途により香辛料その他の調味料と混合されているものがあります。七味トウガラシや
チリソース,タバスコがあり,カレー粉では10〜20%或いはそれ以上の香辛料が混ぜら
れている。
 
[栽培]
 生産栽培 − ダイウイキョウ(インドシナ),オールスパイス(西インド諸島,中央
アメリカ),パブリカ(ハンガリー)などはその生産地が限られていますが,多くの香
辛料は熱帯から温暖地にかけて広範囲に亘って原植物の適地で生産栽培されています。
 温室栽培 − 熱帯産香辛料の中でバニラ,コショウは植物園の温室でみかけます。バ
ニラは生産地では昆虫により受粉されるので,結実には人工授粉が必要です。ほかの原
植物はときに薬用植物園でみることがあります。カーダモン,チョウジなどは全株芳香
があり,観賞温室での栽培に興味があります。
 温暖地での栽培 − ワサビ,スダチのようにその栽培地の限られてているものもあり
ますが,シソ,ショウガ,パセリなどは家庭菜園でも扱われています。このように庭園
で栽培・利用することのできる香辛料植物を別表に挙げました。
 
[栽培上の注意]
 一般に排水良好な土壌で十分日の当たるところが良いです。ハーブ類は播種ハシュ・定植
前に石灰を散布します。多年草・低木では枯穂の残るものが多いですので,花後にこれ
を深めに刈り取って新梢シンショウの発芽を促します。ローズマリーやローレルを除いた低木
や株立ちする多年生草本は3〜4年で更新を図って苗を準備しておいて下さい。
 増殖 − 増殖は実生ミショウ・挿木・株分けなどによります。実生は3,4月か9月がよ
く,利用目的によっては適時に播きます。挿木は新梢の固まった温暖な時期は発根が早
いです。多年草は2,3年経ちますと株が混んできますので移植・施肥を兼ねて秋か早
春に株分けします。
 肥料 − 香辛料としては,少ない肥料のものの風味が優れているとされていますが,
草姿も楽しめますので,草花栽培と同様に扱ってよいでしょう。
 採種 − ハーブにはこぼれ種からの実生苗を多くみますが,一,二年生草本では採種
しておいた方がよいでしょう。セリ科植物のシーズの新しいものは種子として扱えます。
 
[収穫と貯蔵]
 生薬は生育期には何時でも調理に使えます。貯蔵するときは,ハーブ(葉類)では精
油の最も充実している開花初期の枝葉を刈り取ります。晴天続きの午前が良いとされて
います。シーズ類のうちのセリ科植物は株や枝によっては熟度がずれますので,完熟の
ものが見られ始めた頃の枝を順次刈り取ります。
 乾燥は通風の良い日陰に束ねて吊るすか新聞紙に広げます。十分乾燥したものをしご
いて枝から葉やシーズを離し,不純物を取り除いて,それぞれ密閉できる容器に入れて,
植物名・採集年月の札を貼っておきます。
 
[利用]
 香辛料としてのハーブの利用は生葉,乾燥品があり,単一使用とブーケガルニとして
チャイブ,チャービル,タイム,セージ,パセリ,ローレル,マジョラムなど3,4種
を束ねて使うこともあります。スパイスを含めて香辛料の使用は,少量から始めるのが
安全です。
 香辛料は調理に使うほかにポプリ(pot pourri),匂い袋,化粧料にされます。
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