25 松類
松類
参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
[マツ(松)類]
○アカマツ
アカマツ(赤松)の原産地は北海道樽前山麓から九州屋久島まで,また朝鮮半島,中
国遼東・東北部に広く分布します。常緑針葉樹で高さ15〜35m,雌雄同株,樹皮は赤褐色
です。葉は2本束生,長さ7〜12p,幅1oで濃緑色です。花は4月頃咲き,雌花は紅
紫色で新枝の先に2〜3個,雄花は帯緑淡黄色で新枝の下部に多数つきます。変種には
次のようなものがあります。
ジャノメアカマツ:黄白斑フが規則正しく1〜3ケ所入り,上から見ますと蛇の目傘の
ように見えます。
タギョウショウ(多行松):根元近くから枝を多数分枝し,樹形が自然に傘状になり
ます。木の寿命は短く35〜50年,繁殖は接ぎ木,庭木として多く用いられます。ウツク
シマツはこれに似ます。
栽培:他のマツ類と同様,日当たり排水の良いところを好みます。アカマツは乾燥に
は強いですが,公害には弱いです。病害虫はマツクイムシで,これはマツノマダラカミ
キリについているマツノザイセンチュウが原因で,このカミキリムシを退治します。繁
殖は実生,園芸品種は接ぎ木によります。手入れは4〜5月頃に新枝(みどり)摘み,
6〜7月に剪定します。
○クロマツ
クロマツ(黒松)は原産地は本州,四国,九州,朝鮮半島南部で,主として海岸近く
に多く分布します。常緑針葉樹で生育が早く,高さ15〜35m,葉は2本束生,濃緑色で長
さ6〜15p,幅1.5〜2o,雌雄同株です。花は4月頃,雌花は紫紅色で新枝の先に1〜
3個,雄花は黄褐色で新枝の下部に開花し,球果は初め緑色,後に淡褐色となり,2年
目の秋に成熟します。次のような園芸品種があります。
ジャノメクロマツ:葉に規則正しく黄白の蛇の目の斑フが入ります。時期によって斑は
消え,秋に紅を刺します。似た品種にトラフクロマツがあります。
クロオウゴンショウ:枝に黄金色の葉と緑色の葉が混ざります。秋の末に多く斑が生
じます。
栽培:植栽適地は日当たり,排水の良いところです。肥沃な砂質土壌が最適ですが,
土質は選びません。公害には強い方で,潮風にも強いです。病害虫,剪定時期などはア
カマツと同じです。庭植え,盆栽として古くから多く用いられます。繁殖は実生,園芸
品種は接ぎ木によります。
○ダイオウショウ
ダイオウショウ(大王松)はダイオウマツともいい,原産地はアメリカ西海岸などで,
湿気に富む暖地を好みますが,沼沢地や礫質地にも生じます。明治後期に渡来,常緑針
葉樹で高さ20〜35m,樹形は広楕円形,樹皮は暗褐色です。葉は3本束生,マツの中では
最も長く20〜30p,幼木では更に長く40〜50pで,枝先につけます。枝は太く節間が長
いです。庭木,鉢物のほかに枝葉を装飾用に用います。
栽培:移植は難しく,風害に弱いです。湿気を帯びた暖地を好みますが,土壌は選び
ません。繁殖は実生によります。
○ゴヨウマツ
ゴヨウマツ(五葉松)は別名ヒメコマツといい,原産地の北海道,本州,四国,九州
と,朝鮮半島ウルルン島に自生,常緑針葉樹で高さ10〜25m,樹皮は幼時は灰白色から暗
灰色,後に樹皮が亀裂,剥離し,赤褐色となります。葉は5葉で,短枝に束生,外面は
濃緑色,内面は淡緑白色,長さ3〜5pです。球果は長さ60〜75o,径30〜60o,初め
淡緑色,後に淡褐色となります。庭木,盆栽に向きます。
栽培:排水の良い肥沃な土壌を好みますが,土質はあまり選びません。公害にはあま
り強くありません。繁殖は実生,園芸品種は接ぎ木によります。新枝(みどり)摘みは
クロマツなどより弱めに行います。
○ストローブマツ
ストローブマツは北アメリカ東北部などの原産,明治中期に渡来し,常緑針葉樹で高
さ30〜50m,樹形は円錐形,樹皮は初め平滑な緑褐色,後に剥離し灰褐色となります。
葉は5葉で細く,長さ8〜14p,青緑色です。球果は長さ10〜20p,径25〜40o,初め
直立し灰緑色,2年目に熟し下垂又は斜上向きになります。公園などに見られます。
栽培:繁殖は実生によります。
「マツ類の育て方」
○性質
マツ類は,一般に日当たりや排水の良いところを好み,日陰地や湿潤地ではうまく育
ちません。また,アカマツは潮風に弱く,海岸部には適しません。
○植え付け
新梢シンショウが固まった9月上旬から翌春の新芽(みどり)が動き出す直前(4月)まで
の間ですと,何時植え付けてもよいですが,2月から4月にかけてが最適期です。一般
の樹種では,植え付けの際に水決ミズギめ(用土を馴染ませるため十分に水を施す方法)
をしますが,マツ類の場合には,根が過湿を嫌うめ,水を与える代わりに根の間に棒な
どを用いて丁寧に用土を突き入れます。この植え込み方法を土決ツチギめといいます。水
はけが悪い場合には,高植えにすることが肝心です。
○仕立て方
アカマツは自然な樹形を尊重したい樹種ですので,人工的な仕立てをあまりしません
が,クロマツの場合には,よく海岸近くの崖上で見られる姿に似た,豪壮に曲幹仕立て
とすることが多いです。また,池の辺ホトリなどの植栽には,差し枝を強調した流枝ナガシ仕
立てが適します。なお,長めの差し枝が門の上に差し渡るような形に仕立てたものを門
冠モンカブりのマツと呼んでいます。
○整枝,剪定
添え竹を用いての誘引は2〜3月に行います。一般的な整枝作業は年2回で,5月の
みどり摘み(新芽が開ききらないうちに新芽を折り取り,徒長を防ぐ作業)と,11〜12
月にかけて行う揉み上げ(古葉取り作業)とです。樹勢の強いクロマツの場合,みどり
は全て元から摘み取ってしまうこともあります。アカマツはやや樹勢が劣りますので,
短いみどりは残した方がよいでしょう。また,晩秋に行う揉み上げの際には,枝先の混
み過ぎた小枝の間引き剪定(小枝透かし)も併せて行います。
○施肥
マツ類は痩せ地でも育つ代表的な樹種ですから,特別施肥する必要はありませんが,
1〜2月頃寒肥として鶏糞や油粕を施しますと,更に葉色もよくなります。
○病害虫
近年猛威を奮っていますマツクイムシに対しては,樹勢を強く保つしか決め手となる
防除法はありませんが,一般の庭に植栽されるような若木は,まず心配ありません。4
月かせ10月にかけては定期的に薬剤散布をし,コナカイガラムシ,マツケムシなどを防
除します。
○盆栽の管理
置場所は一年を通して十分日が当たり,風通しの良いところがよいです。日照が不足
したり,風通しがよくありませんと枝葉が徒長するばかりでなく,コナカイガラムシが
発生しやすくなります。用土は赤玉土6に桐生砂3,黒土1の割合の水はけの良い土が
よく,3〜4年に一度植え替えます。植え替えの適期は3月中旬〜4月中旬です。5月
のみどり摘み,10〜11月(露地植えより早め)の揉み上げは欠かせません。整枝のため
の針金掛けは10〜11月が適期で,小枝を間引き,古葉を落としてから行います。
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