26 忍・玉羊歯
 
               忍シノブ・玉羊歯タマシダ
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
○シノブ
 シノブ(忍)はアジア東部に分布し,日本では北海道から沖縄諸島の山地の樹幹や岩
上に着生します。太く長く這う根茎は細工しやすく,細かく切れた葉は涼しげですので,
風鈴などをつけ,「釣り忍」の名で親しまれてきました。根茎は径5oで,茶褐色から
黒褐色,線形の鱗片リンベンが密生します。葉は疎らにつき,長さ25p,やや硬い革質で,
葉の基部に関節があり,秋に落葉します。包膜はコップ状で葉裂片に1個つきます。「
釣り忍」は太い針金で形を作り,ヤマゴケを固く詰め,根茎を張り付け,細い針金で巻
いて作ります。
 シノブにそっくりですが,葉が30pと大きいものにシノブモドキがあります。インド,
マレーシアなどに分布し,雲霧林帯の樹幹や岩上に着生します。根茎も径7oと太く常
緑性です。
 栽培:繁殖は株分け又は胞子によります。
 
○トキワシノブ
 トキワシノブ(常葉忍)は原産地は中国中央部,シノブモドキに似ますが,根茎の鱗
片は銀白色です。葉は革質で,長さ15p,包膜はコップ状にはならず,基部だけで葉面
につき,常緑性です。
 栽培:シノブに準じます。
 
○タマシダ
 タマシダ(玉羊歯)はアジア東部から南部,ポリネシア,アフリカに分布し,日本で
は伊豆半島以西の暖温帯から亜熱帯の地上,岩上や樹幹に着生し,日の当たるところに
も生育します。この仲間は,インテリアのグリーンを表現するのに最もよく利用されま
す。根茎は斜上し,匍匐枝ホフクシを出して無性繁殖を盛んに行います。根にできる球塊(
タマシダの名の由来)は,貯水及び養分貯蔵の働きをします。葉は50p,古くなります
と羽片が落下します。包膜は腎形ジンケイ(属名のネフロレピスの由来)で,羽片の縁近く
につきます。常緑性です。水揚げの良くないシダ類の中では,切り花として用いられま
す数少ないものの一つです。
 栽培:乾燥にはよく耐えますが,植え替え後は湿度を保って下さい。冬越しには最低
−1℃以上が必要です。繁殖は株分けか胞子によります。
 
○ボストンタマシダ
 ボストンタマシダの母種のセイヨウタマシダは,熱帯アメリカに分布し,北アメリカ
などにおいて多くの園芸品種が作られました。これらの殆どは,永年の栽培の元で起こ
った突然変異によるものとされます。本種は初期の品種(1896年命名)で,葉はより大
きく,長さ80〜100pで垂れ下がり,硬質で上品な草姿です。これらはタマシダのような
球塊がなく,羽片は線状披針ヒシン形で鋭頭,常緑性です。ピートモスなど軽い植え込み材
料を使用し,吊り鉢にして観賞するとよいでしょう。セイヨウタマシダを母種とする主
な品種として,ツデーシダ(テディ・ジュニア),ピアソンタマシダ,フサフサシダな
どがあります。
 栽培:繁殖は株分け,匍匐枝によります。寒さに弱く0℃以下に晒されると枯死しま
す。
 
「タマシダの育て方」
○管理
 タマシダは耐陰性の強いシダですので,一年中室内で育てることができますが,レー
スのカーテン越しなど薄日の当たる窓辺に置くのがよいでしょう。
 吊り鉢は日光不足になりがちですので,月1〜2回は場所を替えて平均的に日光が当
たるようにします。生長期の4〜10月は,少なくとも週に一度は屋外に出して下さい。
ただし,真夏の直射日光は避けます。
○水やり
 乾燥には可成り強いですが,多湿を好みますので,生長期は水を十分にやり,夏は葉
水もたっぷり与えますと葉が生き生きします。鉢上の表面が乾きましたら,直ぐにたっ
ぷりの水を与えるようにします。
 しかし,夏の高温時に風通しの良くないところに置いてある場合は,葉水は蒸れる原
因となりますので,水差しで鉢土にだけ水をやるようにします。
○施肥
 4〜10月の生長期に,10日に一度位の割合で液肥を1000倍に薄めて与えるか,又は2
ケ月に一度油粕か緩効性粒状化成肥料を鉢の隅に置くか,用土の上部に埋め込んでやっ
てもよいでしょう。冬は原則として与えません。
○病害虫
 カイガラムシがよくつきますので,発生をみましたらスプラサイドやスミチオンなど
を散布して防除します。
○越冬法
 タマシダは比較的耐寒性に富みますが,ボストンタマシダの仲間は3℃以下になりま
すと傷害が起こります。できるだけ6〜7℃以上は保てるところで越冬させて下さい。
暖房している部屋では,天井近くに暖かい空気が集まり,乾きますので,吊り鉢は特に
水やりに注意して下さい。
○植え替えと繁殖
 2年に1回,4〜6月に鉢土を新しくして植え替えます。植え替えるとき,株分けを
して殖やし,また株分けは大きく分けましょう。
 株分けは4〜9月まで行えますが,5〜7月上旬に株分けしますと秋には立派な株に
生長します。
 用土は排水の良いものを用います。赤玉土を中心に腐葉土かピートモスを3割,川砂
1割を加えたものか,又は赤玉土,ピートモス,バーミキュライトの等量を混ぜたもの
を用います。
○再生法
 寒害,乾燥によって葉先が傷んだ葉は半分程切り,枯れたものは根元まで切り戻し,
鉢から抜いて根茎まで傷んでいないかを確認し,傷んでいなければ新しい用土に植え替
えます。芽が動き出しましたら1000倍に薄めた液肥を与えますと回復が早いです。

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